失敗事例

事例名称 クローラクレーンの履帯に轢かれる
代表図
事例発生日付 2002年09月14日
事例発生地 北海道
事例発生場所 JR北海道S運転所構内
事例概要 工事桁撤去に伴う工事桁間の線間仮設通路の撤去作業であり、撤去部材はその都度、クローラクレーンで70m先の解体側とは反対方向の置き場まで吊移動していた。主桁を運搬可能な長さに切断後、4.9t吊クローラクレーンで吊り上げ、180度左旋回したところ吊荷の向きが悪いため作業員が吊荷の向きを直した。吊荷の向きが直ったことをオペレータ自身が確認し、クレーンを走行させたところ、作業員の左足がキャタピラに挟まれて転倒した。
事象 ・クローラクレーンで吊荷状態で旋回後、荷が振れたため吊荷の向きが直り次第、走行状態に入ったが、近くにいた作業員に気づかずに轢いてしまった。
経過 ・午前7時45分に朝礼終了後、重機誘導員、重機オペレータを含む職長以下4名で仮設通路の主桁(H-400)の撤去作業をしていた。
・主桁を3.1mに切断終了後、4.9t吊クローラクレーンで主桁を吊上げ、クレーンを旋回し、作業員が吊荷の向きを直した。
・吊荷の向きが直ったことを確認したオペレータがクレーンを走行させたところ、作業員がキャタピラ(ゴム製)に左足を挟まれて転倒した。
・この事態に気づいた後、直ちにクレーンの走行を止めたが、キャタピラは作業員の左足股下を踏んで停止した。
原因 ・作業員がクレーン走行中に吊荷の振れを修正しようとして、不用意に作業半径内に立ち入った。
・重機誘導員が、クレーン進行方向に作業員がいることに気づかずに、クレーンオペレータに発車合図をした。
・クレーンのキャビンとは反対側に作業員がいたため、クレーン運転手からは見えなかった。
・オペレータは作業員がクレーンから離れているだろうと思っていた。
・作業員は自分が運転手の死角に入っていることがわかっていたが、作業半径内に入ってしまった。
・重機誘導員はクレーン旋回後、後方にいたため作業員の位置を確認できなかった。
・吊荷の振れを直すための介錯ロープが取り付けられていなかった。
・潜在危険に対する対策不足と基準心得の教育が不十分であった。
・クレーン作業半径内は立入禁止であることについて、周知されていると思い込んでいた。
対策 ・クレーンの旋回、走行時に重機誘導員はクレーンオペレータが見やすい位置で合図、誘導する。
・工事管理者(保安担当)が周囲の状況を、よく確認する。
・クレーン、キャリアダンプ、ハンドリング機を併用することにし、クレーンによる吊荷走行を5m程度に改める。
・作業手順を細部にわたって見直し、全作業員に周知させる。
知識化 ・重機旋回範囲内は立入禁止。
・重機誘導員は周囲を確認してから、合図する。
・クレーンオペレータは合図を確認してから、操作をする。
・見えないところに人がいる。
・「だろう」、「はずだ」は事故のもと!
背景 ・撤去部材が少ないこと、軽いものであり、1本ずつ吊運搬して搬出する計画であった。
・解体/搬出のサイクルが次に搬出するまでの時間に往復できることから、吊運搬にした。
・S運転所構内には25本の線路があり、常時列車が出入りしている関係上、作業車が多く入れないこと、機械台数も少なくしたいという気持ちが働いた。
・架空線の高さ関係から走行時のブームはほぼ水平で、荷が軽く、地上から30cmの高さでの吊移動であった。
・線路横断の際の旋回時には介錯ロープで荷振れを制御していた。
後日談 ・重機誘導員は解体側の見える位置にいて、吊上げ、旋回の合図をしてから、クレーンの搬出側前方に移動しようとしていた。
・この際、重機誘導員はクレーンの左後方を移動したため、クレーンの右側斜め前にいた作業員は見えなかった。
・オペレータは荷を吊って、180度旋回して進行方向に向いてしまえば、前方は見通しがよいため、そのまま吊り移動をはじめてしまった。
・オペレータからも作業員側にはキャビン、機器類があって、作業員が見えない死角状態であった。
当事者ヒアリング ・クレーンが動き始めたら入ってはいけないこと、オペレータから死角になっていることも知っていたが、吊荷が振れたので咄嗟に「スッ」と入ってしまった。
データベース登録の
動機
同じまちがいを繰り返さないために
シナリオ
主シナリオ 不注意、注意・用心不足、作業者不注意、誤判断、状況に対する誤判断、作業半径内への立入り、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、非定常動作、状況変化時動作、危険場所立入り、使用、運転・使用、機械の旋回・前進、不良行為、規則違反、安全規則違反、身体的被害、負傷、重傷
死者数 0
負傷者数 1
分野 建設
データ作成者 北島 宗和 (鉄建建設株式会社)