事例名称 |
大清水トンネル火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1979年03月20日 |
事例発生地 |
群馬県利根郡水上町大字谷川字ヌクイリ |
事例発生場所 |
斜坑口から5,375m付近のトンネル内 |
事例概要 |
貫通に伴い、トンネル内で全断面掘削に使用した鋼製ジャンボドリル台(21ブーム)の解体作業を行っていたところ、ガス溶断の火花がジャンボ台のデッキに付着していた油等に着火して火災となった。 |
事象 |
ジャンボ台解体作業中、ジャンボ上段デッキで行っていたガス溶断の火花がジャンボ台中段デッキに付着していた油等のしみた可燃物に着火して火災となり、猛煙が風下の斜坑方へと流れた。そのため、風下の斜坑方に逃げた坑内作業員46人のうち14人が逃げ遅れ煙にまかれて死亡した。 また火災発生後に空気呼吸器(8リッター)を着装して斜坑から坑内に向かった2人が途中で携行空気を消費してしまい死亡した。なお、風上に逃げた作業員8人は全員助かった。 |
経過 |
火災の発生したトンネルは、6工区に分かれた全長22,235mのトンネルのうちの始点側から2番目の工区長5,350mのトンネルで、始点側工区境には518mの斜坑を備えていた。 なお、火災発生場所は終点側の工区境から70mの地点であり、終点側(風上)本坑口までは14,950m、始点方(風下)本坑口は7,285mの位置にあり既に貫通していた。 当日、トンネル内では夜勤者54人が作業していたが斜坑に比較的近い場所で作業していた29人は全員避難している。トンネル奥の工区境付近ではジャンボ台の解体作業(11人)が、その始点側250m付近では巻立てコンクリートの段取り作業(14人)が行われていた。 解体作業の11人の内、風上に避難した8人が助かり、風下に逃げた3人が死亡している。コンクリート段取り作業の14人は全員風下に逃げたが、その内3人が助かり、11人が死亡している。死亡した14人は火災発生場所の風下方1,000mの範囲に倒れていた。 |
原因 |
・ジャンボ台上段デッキで解体作業中のガス溶断火花がジャンボ台中段デッキにたい積していた油のしみたおが屑等に着火した。 ・火災の発見が遅れた。 ・消火器の消火剤が噴射しなかった。 ・初期消火に失敗し、避難が遅れた。 ・風下作業場所への通報が遅れた。 ・貫通に伴う終点方からの強風にあおられて矢板等が燃え、一挙に煙と有毒ガスが坑内に充満した。 |
対処 |
・災害発生後、直ちに対策本部を設け地元消防署及び自社の特別救助隊により救助体制を整えたが斜坑口から噴出する煙がひどく坑口に待機せざるを得ない状態が続いた。その後煙が薄まるのをまって救助隊が入坑したが4日後までに全員遺体で収容された。 |
対策 |
・火気作業前に作動油の抜き取り、油圧ホースの取り外しを行う。(周辺可燃物の片づけ) ・火気作業前に消火器具・装置を準備する。(消火設備を配置) ・防火担当者を配置して作業を監視させる。(監視人の配置) |
知識化 |
・作業手順を決め、関係者に周知してから作業を行う。 ・火気作業を行うときは周辺の可燃物を除去するか不燃材で隔離する。 ・トンネル内の気流は隔壁等を設けて風速を制御する。 ・警報・通話装置を設置する。 ・避難用具(避難用呼吸用保護具、照明器具等)を設置する。 ・消火器は蓄圧式を採用する。(加圧式は湿気に弱い) |
背景 |
・全工区が貫通しており、トンネル内は終点方から始点方に向けて風速5mのかなり強い風が吹いていた。 |
よもやま話 |
トンネル火災が原因で多くの人が犠牲になっている。火気を使用する場合は細心の注意を払わなければならない。 過小評価は禁物である。 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、安全管理不良、不注意、注意・用心不足、可燃物撤去の未実施、可燃物への着火、環境変化への対応不良、使用環境変化、トンネル内多湿化、消火器の消火剤の固化、消火器の機能消失、調査・検討の不足、環境調査不足、自然通気による坑内乾燥、非定常行為、無為、火災発見の遅れ、誤対応行為、連絡不備、風下への通報遅れ、非定常行為、非常時行為、風下への避難、不良現象、化学現象、坑内火災、破損、大規模破損、トンネルコンクリート損傷、身体的被害、死亡、事故死、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
建設業労働災害防止協会、新聞記事
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死者数 |
16 |
負傷者数 |
15 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
北嶋 正義 (前田建設工業株式会社)
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