事例名称 |
高所作業車を吊って旋回中にクローラクレーンが転倒 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年09月08日 |
事例発生地 |
福井県南条郡今庄町 |
事例発生場所 |
ダム洪水吐き静水池 |
事例概要 |
ダム洪水吐き静水池において高所作業車を80トンクローラクレーンで吊り上げ旋回中、転倒して静水池コンクリート壁にブームが当たって止まった。 |
事象 |
玉掛け方法は、高所作業車のアウトリガー4本に12mmの6mワイヤーロープ4本で4点吊りで行った。そのワイヤーロープは事故前日に使用開始した新品のロープであった。 玉掛け者は、地切り状態を確認後、クレーン運転手に巻き上げの合図を送り、巻き上げを開始した。合図は無線で行い、その後合図は行っていない。 巻き上げ開始後、その後、そのまま左旋回を行った。 過負荷防止装置が作動したため、そのままブームを起こしながら20m巻き上げた。 その後、そのまま左旋回を行った。 旋回を始めてからクレーンのブームがキャタピラと直角方向に近くなったときに安定を失って傾き、静水池コンクリートの壁にブームが当たって止まった。 クローラクレーン運転士は免許を持っていた。 玉掛け者は、技能講習修了者であった。 高所作業車の重量は6.6トンであった。 クローラクレーンは80トン吊りで主ブームは47.85m、ジブ13.7m、オフセット角10度であった。 |
経過 |
9月3日から高所作業車の静水池内への搬出入作業を開始した。 以後、当日まで高所作業車の搬出入作業をそれぞれ2回繰り返していた。 当日、何度か過負荷防止装置が作動してクローラクレーンが停止したが、ブームを起こして復帰させて作業を継続していた。 当日、過負荷防止装置外部表示灯のスイッチを切っていた。 高所作業車を搬出中にクローラクレーンが転倒した。 |
原因 |
クレーン作業計画書に高所作業車に対する計画が無かった。 高所作業車の搬出作業が作業打合せ会議でなかった。 作業指揮者がクローラクレーンのジブの荷重を考慮していなかった。 作業指揮者は定格荷重表が複雑で理解していなかった。 クレーン作業がクレーン運転士まかせであった。 クレーン運転士は過負荷防止装置に頼って作業していた。 |
対処 |
事故発生後、元請会社、協力会社の関係者を集め、事故検討会を実施した。 事故発生後、関係者を集めてクレーン作業に関する安全教育を実施した。 |
対策 |
クレーン運転士はクレーン作業中は過負荷防止装置を作動させて作業する。 適正なクレーン作業計画書を作成し、関係者に周知してから作業を行う。 クレーン作業計画は定格荷重の90%以内で作成する。 外部過負荷表示3色灯を設置する。 |
知識化 |
過負荷防止装置はあくまでも過負荷に対する警報であるので、これを定格荷重の確認手段として使用することは危険であり、また使用してはならない。 |
背景 |
高所作業車の搬出入作業は既に数回実施しており、関係者は安易に考えていたようである。 クレーン作業計画書はできていたが、形式的なものであり、肝心の高所作業車に関する事項は記述されておらず、実際は過負荷防止装置を確認しながら作業していた。 |
後日談 |
移動式クレーンの転倒事故・災害は、ほとんどが過負荷防止装置をOFF(スイッチ切断)にしていたために発生している。作業指揮者はなんとか予定作業を遂行しようとしてクレーン運転士に作業指示をするし、クレーン運転士としても何とか期待に応えようと考えるために事故・災害は起きているようです。 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、安全管理不良、調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、手順の不遵守、手順無視、過負荷防止装置の警報無視、不良行為、規則違反、過負荷防止装置スイッチ切り、破損、破壊・損傷、クローラクレーンの損傷、破損、破壊・損傷、高所作業所の損傷、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
前田建設工業(株)事故調査書
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
北嶋 正義 (前田建設工業株式会社)
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