失敗事例

事例名称 泥土圧シールドトンネルのメタンガス爆発災害
代表図
事例発生日付 1993年02月01日
事例発生地 東京都江東区冬木
事例発生場所 地表下深度34m たて坑坑底から1,300mの切羽付近
事例概要 地下34m、坑口から1,300mの位置でシールドトンネル掘進中にメタンガスによる爆発が発生し、作業員4名が死亡し、1名が負傷した。
事象 トンネル掘進に伴い地中から湧出したメタンガスが何かの火源により爆発して、掘進作業中の作業員4名が死亡し、1名が負傷した。
経過 爆発発生当日の夕方から、メタンガス検知器の記録が初めて動いていたが、何の対応も取られていなかった。
爆発発生当日、坑外事務所のメタンガス警報器は警報を発していたが、職員は不在だった。
可燃性ガスを測定する者を指名し、その者に、毎日作業を開始する前に、可燃性ガスが発生し、または滞留するおそれのある場所について、可燃性ガスの濃度を測定させていなかった。
自動警報装置が坑内になかった。
原因 メタンガスを含む地層は存在しないとして施工されていた。
地質調査によりメタンガスの存在を確認できなかった。
換気量が少なく、メタンガスに対応できなかった。
メタンガスセンサーがシールド天端から90cm下がりで設置されており、メタンガスの湧出を早期に検知できなかった。
定置式検知器の警報部分が作業員に知らせることのできる切羽付近でなく、坑外事務所に設置されていた。
定置式検知器の記録が初めて動いていて、メタンガスの湧出を示していたのに何の措置も講じられなかった。
測定器によるメタンガスの測定が行われていなかった。
トンネル内での喫煙が黙認されていた。
対処 トンネル外にいた4名は、ドーンという爆発音を聞いて、探検の目的でバッテリー電車に乗って切羽に向かった。坑底部から1,250m付近で、被災者2名を発見したが、1名は既に死亡していたので、生存者(火傷)1名のみを坑外に搬出した。搬出と同時に、119番通報した。(2月2日2時17分)
消防隊が到着し、救護活動を開始した。(2時35分頃)
2遺体搬出(5時15分頃)
坑内環境が悪化したので救護活動を中止した。(6時頃)
坑内温度:40℃  メタンガス濃度13% CO:90ppm
坑内環境が好転したので救護活動を再開した。(14時頃)
最後の2遺体を搬出し、救護活動を終了した。(17時頃)
対策 地質調査を入念に行い、その結果にしたがって施工計画を立てる。
メタンガス濃度測定者を指名して、毎日作業開始前に測定させる。
メタンガスを希釈できる換気設備を設置する。
必要に応じて防爆仕様の電気機器を使用する。
自動警報装置を設置する。
検知器センサーをシールド天端近くに設置する。
警報作動時の対応を事前に決めておき、関係者に周知しておく。
知識化 全国には、油田やガス田などのメタンガスを包蔵する地層が多く存在する。
地下深くなればなるほど、メタンガスの危険性が増加する。
工事に着手する前にメタンガス対策について十分検討してから着手する。
背景 施工場所の地下には、昔からメタンガスを含む地層が存在することが知られていた。しかし、工事着工前の調査ボーリングの結果では、メタンガスを含む地層は存在しないということで施工計画は作成されていた。
トンネル延長1,430mに対する換気設備としては、φ400mmナイロンターポリン風管と送風圧340mmAq程度の軸流送風機が使用されていた。
切羽に最も近い定置式メタンガス検知機は、シールド機のスクリューコンベヤーの端部に設置されていたが、トンネル天端から90cm下がりの位置に設置されていた。
メタンガス警報装置の警報部分は坑外事務所にのみ設置されていて、トンネル内の作業員には聞こえない仕組みになっていた。
トンネル内の電気設備は、普通タイプ(非防爆仕様)のものであり、喫煙も許されていた。
トンネル天端から60cm下がりの位置にセグメント運搬ホイストモーター(非防爆仕様)があった。
爆発の1週間前にトンネル内への土砂流入があった。
よもやま話 メタンガス爆発災害は、滅多に起きないと油断して換気や測定等の爆発防止に必要な対策を怠っているときに起きる怖い災害です。メタンガスに関しては油断は禁物です。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、環境調査不足、メタンガス調査不十分、調査・検討の不足、環境調査不足、換気量不足、組織運営不良、管理不良、安全管理不良、坑内における喫煙の黙認、不注意、理解不足、センサー位置不良、企画不良、戦略・企画不良、警報器の設置場所不良、不良行為、規則違反、異常に対して無対応、不良現象、化学現象、メタンガスの爆発、破損、破壊・損傷、セグメント破壊、身体的被害、死亡、組織の損失、経済的損失
情報源 新聞記事、越中島ガス爆発事故調査委員会報告書
死者数 4
負傷者数 1
分野 建設
データ作成者 北嶋 正義 (前田建設工業株式会社)