事例名称 |
農業用導水路トンネル工事中のメタンガス爆発災害 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1978年06月28日 |
事例発生地 |
山形県東村山郡山辺町根際字元木 |
事例発生場所 |
坑口から2,400mまで掘削されたトンネル内 |
事例概要 |
坑口から2,400mまで掘削されたトンネル内でメタンガスが爆発して、掘削作業及びコンクリート打設作業に従事していた9名が死亡し、坑口付近を歩いていた2名が爆風で飛ばされ負傷した。 |
事象 |
トンネル掘削に伴い地中から湧出したメタンガスが何かの火源により爆発し、トンネル内で作業中の9名が死亡、2名が負傷した。 |
経過 |
災害発生時、坑内には9名の作業員(1名は職員)が就業しており、1組(4名)は、坑口から約1,600m付近でコンクリート打設の準備作業が行われ、プレスクリート車を連結した積載重量6トン電車が配備され、また他の1組(4名)は、切羽付近で掘削、ズリ積込作業が行われ、ショベルローダー及び鋼車6両を連結した6トン電車が配備されていた。 メタンガスの湧出とその危険性については認識されており、切羽から100mの区間の電気機器は防爆仕様となっていた。 メタンガスの測定については、専任の測定担当者が携帯式測定器で常時測定しており、切羽とその後方300mの地点の2ヶ所には警報器付き定置式検知器を備え、一定以上の濃度になると警報を発し、トンネル電源を遮断するようになっていた。 当日の午前8時頃、切羽後方300m地点の濃度1%で警報がなるようセットされた検知器が警報を発したが、坑内電源が遮断されなかったために検知器の故障と判断してこの検知器の設定基準濃度を4.5%にセットし直した。 午後5時10分頃爆発した。 |
原因 |
定置式のガス検知器が故障したと判断したとき、原因調査、換気対策、修理等の措置を講ずることなく、設定濃度基準を1%から4.5%へ切り換えたまま放置した。 午前中の警報が鳴ったときに退避せず、危険性を過小評価していた。 定置式のガス検知器が、切羽とその後方300mの地点の2ヶ所しか設置されておらず、切羽以外の部分からの局部的なガス噴出に対して不十分であった。 |
対処 |
・被災者の救護を山形、秋田の鉱山に所属する救護隊に依頼した。 ・救護隊は仙台鉱山保安監督部の鉱務監督官が指揮した。 ・坑口からたて坑位置までは自然通気により素面での立ち入りが可能であった。 ・たて坑手前30mに救護基地を設けた。 ・たて坑より奥は高濃度のメタンガスが充満しており、素面での進入は不可能なため、換気ファンを設置し、風管を延長しながら逐次奥部のガスを排除し、素面での作業ができるようにした。 ・風管延長作業と併行して落盤等の防止のため支柱による補強作業も行った。 ・かくのごとく、風管延長、障害物除去、支保等の作業、その他機械の故障等予想外の事態が生じ、機器、資材類の緊急調達の必要も生じ、進行が著しく遅れ難航した。しかし、幸いにも事故なく7月4日15時30分被災者全員の搬出作業は災害発生後6日目にして終了した。 |
対策 |
・担当者を決め、決められた頻度でメタンガスの測定を行う。 ・測定結果に応じて施工計画を変更する。 ・爆発が生ずる恐れのある場合は自動警報装置を設置する。 ・自動警報装置作動時の措置を決め、関係者に周知しておく。 ・メタンガス濃度が爆発下限界の30%以上を確認したときは全員避難させる。 ・計画とおりの換気を行う。 ・発火具の携帯を禁止する。 ・トンネル内での火気等の使用を禁止する。 ・必要に応じて防爆使用の電気設備を使用する。 |
知識化 |
・全国には、油田やガス田などのメタンガスを包蔵した地層が多く存在する。 ・地下深くなればなるほどメタンガスの危険性が増加する。 ・工事に着手する前にメタンガス対策について十分検討する。 |
背景 |
施工区域は寒河江ガス田の周辺部に位置すると共に、秋田油田の母岩である硬質泥岩から成り、背斜、断層、亀裂にはメタンガスが包蔵されている。換気設備については、坑口から1,200m地点に換気たて坑が設けられており、排気ファンが設置されている。たて坑より坑口に設置した軸流ファンを含む4台の直列方式(φ600風管)で切羽へ送気している。電気機器については、切羽より100mの範囲で防爆仕様となっていた。 |
よもやま話 |
メタンガス爆発災害は滅多に起きないと油断して換気や測定等の決められた対策を怠っているときに起きる怖い災害である。 メタンガスに関しては油断は禁物である。 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、環境調査不足、防爆管理区域が切羽付近に限定、組織運営不良、管理不良、安全管理不良、調査・検討の不足、環境調査不足、定置式ガス検知器の台数不足、誤判断、誤った理解、定置式検知器の故障と判断、不良行為、規則違反、定置式検知器の設定基準を変更、誤対応行為、自己保身、定置式検知器が故障と決め込んだ、不良現象、化学現象、メタンガスの爆発、破損、大規模破損、坑内支保工倒壊、身体的被害、死亡、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
建設業労働災害防止協会、新聞記事
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死者数 |
9 |
負傷者数 |
2 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
北嶋 正義 (前田建設工業株式会社)
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