失敗事例

事例名称 旋回したドラグショベルと煙突に作業員が挟まれる
代表図
事例発生場所 ゴミ焼却施設のケーブル配管工事現場
事例概要  ゴミ焼却施設の建設工事現場において、作業員が型枠部材の運搬中に煙突とドラグショベルの間に挟まれて死亡した。原因は誘導員が配置されておらず、危険な区域への立入禁止表示はなく、安全教育が不十分であったこと等である。
事象  被災者は、煙突横に置いてある頼まれた木片を持ち、トラックの脇を通ってドラグショベルと煙突の間を通り抜けて掘削現場に戻ろうとしたが、その時ドラグショベルが旋回し、掘削した土砂をトラックに積み込もうとしていたため、ドラグショベル上部旋回体後方右側と煙突の間に挟まれた。
 被災者が木片を抱えてうずくまっていた。
 被災者を病院に搬送したが、脾臓破裂、多発性骨折、脊髄骨折のため死亡した。
経過  被災者は、8時15分から開始された元請の朝礼、ツール・ボックス・ミーティング、危機予測活動に同僚3人と参加した。このとき元請の現場監督から作業内容の指示と建設機械との接触危険についての注意が行われた。
その後、被災者は同僚の型枠工と徒歩で作業場所へ移動し前日までに掘削した箇所の地ならし作業及びマンホールの型枠の準備を行っていた。
 ダンプトラックとドラグショベルの運転手は、別の場所にある砂の仮置き場で砂を1.5m3程度を積み込み被災者のいる作業場所に運搬した。
 会社の現場監督は、現場に遅れて到着し、当日の作業内容の指示と、狭い場所での作業に注意をした後、別の作業現場へ移動した。
 ドラグショベルの運転手はケーブル保護用の砂を6杯程度掘削箇所に入れ、被災者はそれをジョレンで均す作業をしていた。
 その後ドラグショベルの運転手は旋回するのに邪魔になるセメント袋15袋を安全通路のほうによけ作業の邪魔にならないようにした。
 被災者は、マンホールの築造作業に従事していた型枠工から「型枠に使用する木片をとってきてくれ」と頼まれたので作業用として指定された通路を通って木片をとりにいった。
 この間、ドラグショベル運転手は、掘削箇所に誰もいなかったので掘削作業を続けていた。
 被災者は、煙突横に置いてある頼まれた木片を持ち、トラックの脇を通ってドラグショベルと煙突の間を通り抜けて掘削現場に戻ろうとしたが、その時ドラグショベルが旋回し、掘削した土砂をトラックに積み込もうとしたため、ドラグショベル上部旋回体後方右側と煙突の間に挟まれた。
 一方ドラグショベルの運転手は、ドラグショベルを旋回させたとき「ガリッ」と音がしたのでドラグショベルが煙突に接触したと思い、逆方向に旋回した後、運転席から降りて煙突側に回って確認すると、被災者が木片を抱えてうずくまっていた。
 被災者は、病院に搬送されたが、脾臓破裂、多発性骨折、脊髄骨折のため死亡した。
原因  車輌系建設機械の稼動範囲で危険な区域への立ち入り禁止措置を行っていなかった。また、誘導員の配置がなされていなかった。
 安全指示が不徹底であった。
1.作業場所において具体的にどこからどこまでが立ち入り禁止なのか指示が充分でなかった。
2.立ち入り禁止区域内に立ち入る場合の建設機械の停止誘導合図等についての取り決めがなされていなかった。
3.ドラグショベルの運転手に後方確認の指示がなされていなかった。安全通路にセメント袋を積んだことにより、通路として利用しづらかった。危険予知訓練(KYT)等安全教育が不充分であった。
4.稼動中のドラグショベルに近づく、通り辛いとはいえ安全通路を利用しないのは、危険な行為であり、従業員に対する安全教育が不充分である。
5.KYT活動を行っていて、「危険箇所」についての指摘訓練はしていたものの、「危険」の回避措置について作業員に考えさせる訓練は徹底されていなかった。
対処 被災者を病院に搬送した。
対策  車輌系建設機械が運行する場所については、立ち入り禁止措置を徹底するとともに、作業員に周知徹底する。
 建設機械等との接触防止等に関する安全教育を徹底する。
1.現場のどこからどこまでが立ち入り禁止区域なのか明確にする。
2.立ち入り禁止場所に入る場合は、連絡、合図の方法を定め徹底する。
3.バリケードの設置、立ち入り禁止の表示、誘導員の配置について朝礼等で繰り返し説明徹底する。
4.安全通路を確保し、そこを通行するように徹底する。
5.危険予知活動等安全教育を徹底し、危険の回避措置をどうするかまで、作業員に考えさせる訓練をする。
6.作業計画を作成し、作業手順を定め、是に基づき作業を行う。
知識化 事故防止には、危険を危険と感ずるまでの教育の徹底と、危険の回避措置を考える訓練が必要である。
背景  ツール・ボックス・ミーティングが形骸化し、元請現場監督・会社の現場監督の指示・注意事項が、作業員の行動に反映されていない。
 また、指導監督する側も、細部まで指導できず、作業員の理解度を把握していない。
 作業員に対する教育不足から、危険に対する感受性が薄い。
シナリオ
主シナリオ 不注意、理解不足、リスク認識不足、誤判断、状況に対する誤判断、近道行動、環境変化への対応不良、使用環境変化、狭い場所での作業、価値観不良、安全意識不良、通路にセメント袋、組織運営不良、管理不良、立ち入り禁止措置なし、定常動作、不注意動作、危険場所立入り、不良行為、倫理道徳違反、近道行為、身体的被害、死亡、事故死、組織の損失、社会的損失、信用失墜
死者数 1
分野 建設
データ作成者 伊貝 星治 (株式会社 イチテック)
馬場 完治 (株式会社 イチテック)