事例名称 |
近道行為によりエレベーターの屋根から30m墜落 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年04月25日 |
事例発生場所 |
マンション新築工事 |
事例概要 |
はつり工が、12階の取り込みステージから11階に停まっているロングスパンエレベーターの屋根に飛び降りようとして、バランスを崩して、つま側のネットの間から1階まで墜落して死亡した。 |
事象 |
マンション12階ではつり作業終了後、作業道具を降ろそうと、11階に停まっているロングスパンエレベーターを12階に上げるため、80cmの段差のあるエレベーターの屋根に飛び降りようとしたときバランスを崩し、屋根の上より端側の垂直ネットの間から1階まで約30m墜落して死亡した。 12階から11階への昇降階段はロングスパンエレベーターから2mほど離れた場所に設置してあった。 |
経過 |
災害発生当日、マンション新築工事現場において、午前8時より朝礼、体操、KY活動を行い、元請より本日作業の注意事項等の発表があり、作業員40名が一斉に作業にとりかかった。 一方、被災者(4次下請け)は、近くの現場で近く始まる作業の打合せを行い、午前10時ごろ現場に到着した。 当日の作業内容を、元請の施行指示書で確認し、マンション12階ではつり作業を行い、正午過ぎに終了した。 その後、作業道具を降ろそうと12階のロングスパンエレベーターのステージ前に運んだ。 たまたま、11階までロングスパンエレベーターが上がってきたので、被災者はエレベーターを運転してきた作業員に「12階まで上がってくるのか」と尋ねたが運手者は「材料降ろしのため11階で止まる」と答え、荷下ろし作業を開始した。 午後12時35分頃、被災者は、11階に止めてあるロングスパンエレベーターを12階に上げようと思い、2m隣に昇降階段があるにもかかわらず、これを使用せず、12階の取り込みステージから80cm下のエレベーターの屋根に飛び降りようとした時、バランスを崩し屋根の上から、つま側の垂直ネットの間から1階まで約30m墜落して死亡した。 |
原因 |
・30kg作業道具を人力で1階まで降ろすのは難しく、ロングエレベーターを使用せざるを得ない。 ・作業が昼休みの時間になり、食事も早くしなければならず、次の現場へも急いで行かなければならなかった。 ・正規の階段を下りるのは面倒で、近道をしようと思った。 ・12階ステージとロングエレベーターとの段差が80cmのため、屋根に飛び降りて搬器に降り、ロングエレベーターを12階まで上げようとしたと、考えられる。 ・スポット業者のため新規入場者教育を受けていなかった。(不定期な時間に入場した) ・ロングエレベーターの運転者は、業者毎に責任者を決めていたが、徹底がはかられなかった。 |
対策 |
・スポット業者、不規則時間に入場する業者に対しても、新規入場者教育を確実に実施する。 ・スポット業者に対して、作業前日担当者がFAXにより安全指示書を発行し、作業当日、再度安全指示事項について確認する。 ・ロングスパンエレベーターの運転者を選任し、運転を行う。 ・ステージ扉の高さを1.1m~1.6mとする。 ・作業員の不安全行動防止対策としてイエローカード制度を導入する。 |
知識化 |
人は、近道行為の本能的行動災害を、起こすものである。 近道は、命の道も、近回り。 遠くても安全通路を通りましょう。 |
背景 |
・作業が昼休みの時間になり、食事も早くしなければならず、次の現場へも急いで行かなければならなかった。 ・正規の階段を下りるのは面倒だと思った.近道をしようと思った。 ・スポット業者のため新規入場者教育を受けていなかった。(不定期な時間に入場した) |
よもやま話 |
・安全設備、通路等については、整備されていたが、被災者本人がエレベーターの手摺部分を自分で外し、立ち入り禁止区域に立ち入り、エレベーターの屋根に飛び降りようとしたもので、近道行為の典型ではあるが、この種の作業員の資質を見抜くのは、非常に難しい。ましてスポット業者であればなおさらのことである。 現場担当者としては、このような災害を無くすには充分な安全設備と、協力業者の安全衛生教育・指導を行い、作業員一人ひとりのモラルの向上を図らなければならない。 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、理解不足、リスク認識不足、手順の不遵守、手順無視、近道行為、価値観不良、安全意識不良、入場者教育なしで作業、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、非定常動作、状況変化時動作、飛び降りる、不良行為、規則違反、近道行為、身体的被害、死亡、事故死、組織の損失、社会的損失、信用失墜
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死者数 |
1 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
伊貝 星治 (株式会社 イチテック)
馬場 完治 (株式会社 イチテック)
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