事例名称 |
橋脚を築くために設けた締め切り支保工が倒壊 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年09月07日 |
事例発生地 |
埼玉県草加市 |
事例発生場所 |
槐戸橋架け替え工事現場 |
事例概要 |
鋼矢板で締め切った内部の土砂をクラムシェルで掘削していた。その作業中に締め切り支保工が大音響とともに倒壊し、2人が圧死、2人が重軽傷を負った |
事象 |
橋脚を築くための鋼矢板で締め切った内部の土砂を地上に据えたクラムシェルで掘削していた。その作業中に締め切り支保工が大音響とともに倒壊。2人が圧死、2人が重軽傷を負った。その原因は、施工計画図では締め切りの内部には掘削が進むにつれ支保工が合計三段架かることになっていたが、三段目の支保工なしで、下まで掘ったことである。 |
経過 |
・現場ではまず一次掘削を行い、8月29日に一段目の支保工を設置。 ・引き続き二次掘削を進め、9月3日に二段目の支保工を設置。 ・そして、三次掘削を始めた。通常なら三次掘削後、三段目の支保工を仮設してから最終掘削に取りかかるところだが、三段目の支保工を設けず、床付け面の約3分の2を掘り終えるところまで掘削を進めた。 ・9月7日、不完全なままに形を保っていた支保工がついにきしみ始める。 ・最初は午前9時ごろ、二段目支保工の上流の川側のコーナー部にある火打ち梁のボルト4本が破断した。コーナー部の火打ち梁は、段違いで交わる相互の腹起こしをつないだものだ。午後からの作業で切れたボルトを補修した。これとは別に、一段目支保工の上流で陸側にある火打ち梁のボルト4本も切れていたので補修を行った。 ・午後2時50分ごろ、今度は二段目支保工の上流で陸側にある火打ち梁のボルト4本が破断。 ・5分後の2時55分ごろ、締め切り支保工は陸側から倒壊した。 |
原因 |
・三段目の支保工なしで、下まで掘ったことが一番の問題である。 ・一段目、二段目に設置した支保工には、計画図にある火打ち梁をほとんど取り付けていなかった。施工者が火打ち梁を取り付けたのは、一段当たり28カ所中、コーナー部の4カ所だけ。かろうじて火打ち梁を取り付けたコーナー部にも問題があった。長辺側の腹起こしと短辺側の腹起こしをつなぐ火打ち梁の接合面には計算上10本のボルトが必要だが、実際には4本のボルトでつないだだけだった。腹起こしと腹起こしとの交点も、本来ならコーナーピースを使って双方の腹起こしをボルトで固定するべきところが、単に重ねてあるだけだった。 ・さらに、切り梁に取り付けたキリンジャッキの補強金物が、一つも無かったことなども明らかになった。 |
知識化 |
施工計画に基づいた施工の実施 |
背景 |
警察署の調べでは、事故の一番の原因とみなされた三段目の支保工は、掘削の邪魔になるので、掘り終わってから取り付けることにしていたらしい。手配はしていたものの、事故のあった9月7日になっても資材は現場に納入されていなかった。また、火打ち梁をほとんど抜いていたのも、クラムシェルによる掘削の能率を少しでも上げるためだったらしい。火打ち梁をつなぐボルトの本数が少なかったことに関しては、「少なくても大丈夫だろうという判断が働いた結果だ」と草加警察署ではみている。直接の事故原因とはいえないが、工事を始めるまでにも現場ではミスを犯していた。深さ1Om以上の掘削工事であるにもかかわらず、労働安全衛生法第88条で定めた施工計画の事前届けを所轄の労働基準監督署に出していなかった。事故の約1ヵ月前に現場を巡視した浦和土建工業の統括所長が、届けを出していないことに気づいて現場代理人に口頭で指示を与えたものの、結局、届けを出さないままだった。 |
後日談 |
警察署は、現場代理人、主任技術者、下請会社の現場代理人の3人を業務上過失致死傷の疑いで、地方検察庁へ書類送検した。また、元請会社は事故の後、現場巡視回数を従来の3倍に強化したほか、労働基準監督署への届出漏れをなくすため、着工時に口頭で行っていた現場への指導を書類で確認できるようにするなど事故の再発防止に努めた。 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、身体的被害、死亡、事故死、破損、大規模破損、崩壊
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情報源 |
建設事故 重大災害70例に学ぶ再発防止対策(日経コンストラクション)
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死者数 |
2 |
負傷者数 |
2 |
社会への影響 |
建設省は槐戸橋の事故を受けて、簡単で確実な切り梁式締め切り方法の開発にも取り組んだ。その成果が「火打ちブロック」と呼ばれるもの。切り梁の先端部と火打ち材とを一体の部材としてプレキャスト化した。切り梁を施工する際の人為的なミスを減らせるとの考えから、同省は直轄工事への導入を推進した。 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
田中 信幸 (日本技術開発株式会社)
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