事例名称 |
エタノールプラントにおける高圧エチレン配管からのガスの漏洩による爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年05月02日 |
事例発生地 |
三重県 四日市市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
エタノール製造装置を定常運転中、エチレンを主とするリサイクルガスの高圧配管のT字部でエロージョン・コロージョンが起きて減肉し、内圧に耐えられなくなってエチレンガスが漏れ、爆発、火災となった。水分を含んだ気液混相流が高速に流れていたため、著しく腐食が進んだ。 |
事象 |
エタノール製造装置の反応工程を定常運転中、エチレンを主とするリサイクルガスの高圧配管のT字部が破損してエチレンが漏れ、静電気により着火して爆発、炎上した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
付加 |
化学反応式 |
図3.化学反応式
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物質 |
エチレン(ethylene)、図4 |
事故の種類 |
漏洩、爆発・火災 |
経過 |
エタノール製造プラントを定常運転していた。 1997年5月2日17:03 プラント内のパトロール中に異音と煙に気付く。 17:04 爆発音の後、火災が発生した。 17:05 プラントの緊急停止操作を実行した。 17:06 消防に通報した。14台100人が出動した。 17:09 自衛消防が屋外消火栓を用いて初期消火し、ほぼ消火した。 17:19 鎮火を確認した。 20:30 反応器出口のエチレン濃度がほぼ0になったので放水を停止した。 |
原因 |
過去約10年間、高負荷の運転を行い、高温高圧のエチレンと水の高速(過去14.5m/s、事故時12.2m/s)の気液混相流(気相93%)により、T字配管部の突き当たり部分がエロージョン・コロージョン(浸食と腐食)により減肉し、内圧に耐えられなくなって破損した。 |
対処 |
1.プラントの緊急停止 2.緊急放出弁を開放し脱圧 3.屋外消火栓による消火作業 |
対策 |
1.配管の保全管理の見直し 2.1年ごとの定点測定と5年ごとの集中測定を実施 3.曲管部の材質を炭素鋼からクロムモリブデン鋼に変更 4.老朽設備の外部専門機関による設備診断を実施 5.配管内の流速管理の強化 |
知識化 |
1.水分の存在によって腐食が促進されることは明白だが、高速の流れに伴う局部的な渦があると、エロージョン・コロージョンにより、腐食がさらに促進される。 2.設備をそのままにして処理量を増やす場合、短期間では影響が出なくとも長期間では問題になることがある。これもその一つであり、広範囲な検討が必要である。 |
背景 |
1.設備管理の不十分な典型例と考えられる。同プロセスは循環エチレンガスに純水を注入し、水を蒸発させ固体触媒上で反応をさせる。発災箇所は水注入後の熱回収熱交換器出口であり、運転条件により気液混相流の状態が変わる。報告書によれば、液相7%と気相93%の混相流である。これは設計条件か実運転条件か不明だが、オリジナルの設計は適度な混相状態と流速を抑えることで、気液混相流によるエロージョンコロージョンは想定していない。処理量増加により相対的に熱交換器の能力が不足し、注入水が蒸発しきれず混相の液相比率が高くなり、流速が上がったことと併せ、エロージョンコロージョンを促進させた。処理量増加時の検討不足とその後のフォロー不足が原因と考える。 2.導入技術であり、技術内容の十分な理解が出来ていないことも考えられる。 ただし、定性的には簡単な理屈だが、定量的に評価することは相当以上に難しい問題であろう。 |
データベース登録の 動機 |
設計以上の高負荷運転を続け、気液混相流からのエロージョンによる腐食の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、設備管理不良、使用、保守・修理、点検、計画・設計、計画不良、運転計画過大、不良現象、熱流体現象、混相流、破損、減肉、エロージョン、二次災害、損壊、漏洩・爆発
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成9年(1998)、p.76-77
化学品物流研究会、物流事故対策事例と緊急措置カード(1995)、p.88-90
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例‐Case 100‐(1999)、p.10
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
加熱炉周辺焼損、配管及び被覆(保温材)破損.水和反応器周辺及び加熱炉から当該反応器までの配管ラック器一部を焼損. |
被害金額 |
108万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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