事例名称 |
フレアスタックからの飛散物による芝草火災 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
2000年12月12日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
他装置の停止の影響で、エチレン製造装置内のGT発電設備を単独運転に切り替えた。そのときGTの回転数が下がり、通常より100rpm高く設定されたGT緊急停止のインターロックによりGTは緊急停止した。GT停止により、停電状態になったので、エチレン装置は緊急停止した。そのためエチレン、プロピレン等のガスが大量にフレアスタックから放出され燃焼された。この放散ガスにより、フレアスタック内面に付着していたカーボンブリックが飛散し、高温カーボンにより、芝草が燃えた。 |
事象 |
石油化学工場のフレアスタックがエチレン製造装置の緊急停止作業のため、大きな炎を上げた。そのときフレアスタック上部から高温のカーボンブリックが飛散し、フレアスタック近くの枯れた芝生が燃えた。 カーボンブリック: そのまま訳せば”炭素煉瓦”だが、フレアスタック内面などに付着した炭素の塊を言う。 |
プロセス |
廃棄 |
単位工程フロー |
図3.電気系統図
|
物質 |
カーボンブリック(Carbon brick) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
2000年12月12日 13:04 エチレン製造装置が、装置内のガスタービン(以下GT)の緊急停止に伴い緊急停止し、フレアスタックからエチレン、プロピレンなどのガスがフレアスタックに放出され、多量の黒煙と炎が上がった。 13:05 フレアスタックから約30m離れた芝草が燃えているのを協力会社員が発見、消火器で消火した。 |
原因 |
エチレン製造装置の緊急停止でガス流量が増えたフレアスタックで、内面に付着したカーボンブリックがガス流れに巻き込まれ、フレアスタックの火で高温になり地表に落下した。 |
対処 |
消火器3本で芝草の火を消した。フレアスタック近くの危険物タンクの散水線を開き、タンクの冷却をした。(規定されている方法である。) |
対策 |
1.GTの停止に至ったタービン回転数低下によるGT停止の設定値ほか機器点検後の設定値の確認を徹底した。インターロックの設定値の確認は少なくとも、全く独立して、別の人間によりダブルチェックすることが必要である。 2.フレアスタック下側の芝生をはがし、砕石舗装とした。 |
知識化 |
種々のトラブルの想定をして対策を取っていても、非常に単純な人間の過ち(ヒューマンエラー)によって思いがけない形でトラブルになる。 |
背景 |
エチレン装置が緊急停止したことと、フレアスタック内面にカーボンブリックが付着していたことである。 1.エチレン装置の緊急停止は1)他の電力使用量の大きな装置が停止したため、東京電力への逆潮を防止するため、エチレン装置内のGT発電機を単独運転に切り替えた。2)単独運転ではGT発電機の出力を下げる必要があり、そのため一時的にGT回転数が低下する。3)GT 回転数の過度の低下は重大故障につながるため、インターロック(IL)で停止する。設定回転数が本来平常運転回転数の95%であるが、事故時は96%に誤設定されていた。(以上資料 図3)このため停電になり緊急停止した。したがって、エチレン装置が停止した原因はGT発電機の回転数低下IL の誤設定による。 2.カーボン粒子の付着はエチレン装置のスタート時に発生すると考えられ、運転中に徐々に減少していく。トラブルの前のスタートは、11月20日に定期消火工事が終了してスタートしたばかりなので、まだ残っていた。 (逆潮;電力会社側に向かって、需要者側から電気が流れていくこと。) |
よもやま話 |
GTはエチレン製造装置の不可分の装置ではなく、コスト低下のために設置した。このような付加的装置が原因となって、本体の運転停止では何のための投資かということになる。と言って、コスト低下の投資をしないと競争に負ける。難しい投資判断が増えている。 |
データベース登録の 動機 |
フレアスタックは一般的に完全燃焼すると思われていたが、そうではなかった例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
未知、異常事象発生、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、計画・設計、計画不良、最悪事態の想定無し、非定常操作、緊急操作、緊急停止、不良現象、熱流体現象、剥離・飛散、二次災害、損壊、火災
|
|
情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(2000)
|
社会への影響 |
芝草約1.5平方m焼失 |
マルチメディアファイル |
図2.フレアースタック図
|
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|