事例名称 |
監視用計器不良のままに運転し酸素濃度の上昇による回転式ろ過器の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年07月01日 |
事例発生地 |
大阪府 泉佐野市 |
事例発生場所 |
食品工場 |
事例概要 |
1989年7月1日、食料油の製造工場で、動物性油と溶剤から発生する結晶をろ過分別するホリゾンタルフィルターが定常運転中、突然爆発した。ホリゾンタルフィルターの密閉カバーの側面と天井の容器部が全周の約1/4にわたって破断した。爆風によりホリゾンタルフィルター室の壁体および屋根が破壊した。このときホリゾンタルフィルター内の酸素濃度はノルマルヘキサンの可燃性混合気の爆発下限界である酸素濃度の11.9%を越えていた。また、装置内の配管フランジ部に蓄積された静電気による火花が火源となったものと推測される。 |
事象 |
食料油製造工場で、ろ過器の爆発があった。可燃性の油脂と固形分をろ過する回転式のろ過器を酸素濃度計が故障のまま運転し、爆発させた。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
分離 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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物質 |
ヘキサン(hexane)、図4 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. 動物性油と溶剤のノルマルヘキサンとを冷却しながら攪拌した結果発生する結晶をろ過分別するためのホリゾンタルフィルターが、定常運転中、突然爆発した。 2. ホリゾンタルフィルターの密閉カバーの側面と天井の容器部が全周の約1/4にわたって破断した。 3. 爆風によりホリゾンタルフィルター室の壁体及び屋根が破壊した。 4. 発災時に付近を巡回していた作業員が初期消火を行い、また、自動火災報知設備の発報により運転操作員が工場全体の運転を緊急停止させた。 |
原因 |
1.通常運転中のホリゾンタルフィルター内の酸素濃度は、8~10%に管理されている。しかし、事故当時は酸素濃度記録計が不良になっており、窒素の供給量の制御ができず、酸素濃度が11.9%(ノルマルヘキサンの可燃性混合気の爆発下限界)を越えていた。 2.内部の開放及び解体点検の結果、装置内の配管フランジ部にボンディング不良個所が確認されており、蓄積された静電気による火花が火源となったものと推測される。 |
対処 |
1.泡放水 2.工場の緊急停止 |
対策 |
窒素封入設備の自動化と再点検 |
知識化 |
安全確保の基本である測定ができない場合に運転をしてはならない。この原則を破って運転を強行すれば、危険な状態に陥る可能性が非常に大きい。 |
背景 |
1.空気と炭化水素を共存させて運転をする装置では一歩間違えれば必ず事故になると思われるが、その装置を酸素濃度計が故障のまま運転させた。運転管理の緊張感のないことが要因の一つであろう。 2.配管フランジ部のボンディング不良を放置した、あるいは気が付かなかった設備管理の不備も問題である。静電気に対する無知または怠慢があった可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
最重要の計器が使えない状態で運転して事故をおこした例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、思い込み、不良行為、規則違反、安全規則違反、使用、保守・修理、補修せず、機能不全、システム不良、安全システム不調、不良現象、電気故障、断線、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.32、62-63
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物的被害 |
ホリゾンタルフィルター本体及び同室の建屋(避雷針含む)並びにフィルター上部に設置の泡ヘッドが構内の半径20m範囲に飛散.ホリゾンタルフィルター室の壁体及び屋根の一部破損.ノルマルヘキサン2450リットル,第4類動植物油類1050リットル被害. |
被害金額 |
6000万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.概要図
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図4.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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