事例名称 |
安全弁元弁の閉止による液化二酸化炭素低温タンクの破裂 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1969年03月01日 |
事例発生地 |
福島県 伊達町 |
事例発生場所 |
製鋼工場 |
事例概要 |
製鋼工場内の液化二酸化炭素低温タンク(CE:cold evaporator)の補修作業時に液を入れたまま、安全弁の元弁を閉め、冷凍機を停止し、更に加熱器の熱源を切らなかった。そのため、タンク内の温度、圧力が増加しCEが破裂し、それに伴う急激な圧力低下により二酸化炭素の蒸気爆発が起こった。 |
事象 |
鉄鋼工場の液化二酸化炭素の低温貯蔵タンクで、修理作業のため、液化二酸化炭素を貯蔵したまま、安全弁の元弁を閉止し、さらに、冷凍機の電源を停止した。しかし、加熱器の電源は入れたままであったため加熱器からの熱と外気からの吸熱により、タンク内の液化炭酸ガスの温度と圧力は上昇し続けた。タンク内圧がタンクの破裂圧力を越え、タンクに亀裂が生じた。亀裂のため、タンク内圧は大気圧と同じになり、その急激な圧力低下のため貯槽内の液化二酸化炭素が蒸気爆発を起こした。 |
プロセス |
貯蔵(ガス・液化ガス) |
単位工程フロー |
図2.タンクユニット・フローシート
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物質 |
(液化)二酸化炭素(liquefied carbon dioxide)、図3 |
事故の種類 |
破裂 |
経過 |
1.液化二酸化炭素低温タンクの液面低下が大きく、それにもかかわらず供給先でのガスの出が悪くなった。逃し弁他の漏れと判断し修理に入った。(報告書から推定) 2.このとき安全弁、破裂板、圧力逃し弁の元弁は閉止し、冷凍機電源は切り、加熱器の電源は入っていた。 3.突然破裂した。タンクは7ヶ以上の破片に分かれ飛散した。 |
原因 |
液化二酸化炭素タンクの保全作業を行うに当たり、1)安全弁、破裂版、圧力逃がし弁の元弁を閉止し安全弁等が作動できない状態にして 2)液を確保したままであった、 3)さらに加熱器の熱源を停止しなかった。その熱と外部からの吸熱により液化二酸化炭素の温度が上がり、圧力も増加した。 |
対策 |
修理作業時のマニュアルは出来るだけ詳しく、また、具体的に書く。外部の人間でもわかるよう分かりやすく書く。 |
知識化 |
1.液化ガスなどを密閉容器に入れた場合の圧力はその温度の平衡圧力になる。低温貯槽など外部からの吸熱が考えられる装置では、外気温度の平衡圧力まで上がることを十分に理解する。 2.修理作業中のミスは多い。理由は、定常的な仕事ではないこと、外部の人間がタッチすること(安全面の教育が十分にされていないことが多い)、仕事を急がされて十分な安全管理が出来ないこと等考えられる。 |
背景 |
1.無知の一言に尽きる。密閉容器中に液体と気体が共存すれば、その圧力はその温度における平衡圧力となる。低温貯槽では加熱しなくとも大気からの入熱で温度即ち圧力が上がる。冷凍機を停止し、安全弁等の元弁等を閉めたら破裂するのは当然である。 2.内部液がある時に安全弁類の機能を全て損なうような工事は、やはり行うべきではない。 |
よもやま話 |
☆ 加圧下で沸点以上に維持されている液体は、圧力が急激に低下した場合、液が表面だけでなく内部からも急激に蒸発して蒸気爆発を起こすことがある。十分に理解しておく必要がある。 ☆ 外部の作業員に対する教育不足は理解できる。教育しても今後に繋がらないこと(継続的な雇用が行われていない)、企業秘密が漏洩すること、安全管理も企業のノウハウで外部の人間に知らせたくない等が理由であろう。しかし、事故を起こせばそれどころではないはずである。 |
データベース登録の 動機 |
平衡圧力を知らずに起こした事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、勉学、経験とも不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、不良行為、規則違反、安全規則違反、使用、運転・使用、間違った停止方法、破損、大規模破損、破裂、身体的被害、死亡、3名事故死、身体的被害、負傷、38名負傷、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
高圧ガス保安協会、液化炭酸ガス低温貯槽の破裂 事故調査報告書(概要)(1969)
高圧ガス保安協会、高圧ガス事故例集(1982)、p.236-237
北川徹三、爆発災害の解析、日刊工業新聞社(1980)、p.321-322
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死者数 |
3 |
負傷者数 |
38 |
物的被害 |
貯槽胴部の破片最長約360m飛散.周辺半径50m以内のスレート張り工場は柱のみを残し大破。半径100m以内の住宅の戸・窓・屋根瓦飛ぶ。半径500m以内の窓ガラス破損 |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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