事例名称 |
油槽所で保全工事完了前に配管使用して火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1994年10月09日 |
事例発生地 |
長野県 上田市 |
事例発生場所 |
油槽所 |
事例概要 |
内陸部の中継油槽所内のガソリンタンク等で火災が起こった。最初は漏油火災で、更に3基のタンクに延焼し、爆発的な火災となった。保全工事中であるため、ボルトを閉め忘れた配管の継ぎ目からガソリンが扇状に噴出、漏洩し、何らかの火源から引火し、火災となった。作業開始前の基本操作であるラインアップが行われていなかった。火源はフォークリフト、噴出するガソリンの静電気などが推測された。 |
事象 |
油槽所でガソリン配管の修理作業中に火災事故が起こった。関係者が死亡したため発災当時行っていた作業は正確には判らないが、次のように推定されている。工事完了以前に移送作業を始めた。そのとき、配管のつなぎのフランジをボルトできちんと固定しないでガソリンの移送を始めたか、あるいは、フランジが接続される前に元バルブを開けたためガソリンが流出し、火災になった。 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
ガソリン(gasoline) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
最初は、配管継ぎ手部分からのガソリン漏えいで、ガソリンに引火した。それから、防油堤内外に漏えいした油及び複数のタンクが火災となった。周辺民家等に火災からの放射熱による被害があった。 |
原因 |
1.ラインアップのミス。完全な人災に近い。 2.工事担当と運転担当間の連絡ミスの可能性があり、工事終了前に移送作業を開始した。とは言え、運転担当がラインアップという基本中の基本を疎かにしたことは他に転化できない。 3.着火源は、静電気またはフォークリフトの火花の可能性がある。 ラインアップ: 作業を開始するために、配管や容器等の接続を確認したり、全てのバルブの開閉が正しく行われていること等を確認し、作業開始の準備ができていることを確かにする作業を言う |
対策 |
事故後、同施設は廃止(休止)となった。修理作業マニュアルの作成と管理の強化が必要である。休日の作業時は作業員が少なく、より十分な管理と注意が必要である。 |
知識化 |
ラインアップという全ての作業の最初に行う基本中の基本でミスをしている。しかもガソリン配管の主管で。このように重要な作業は一人作業でなく二人作業にするとか、2重のチェックをするとかして厳重な上にも厳重な確認が必要である。必要とする資料も同様にダブルチェック以上の厳重さが必要である。 |
背景 |
1.ラインアップを何故やらなかった、何故不正確だったかが最大の要因であろう。日常的にラインアップを軽視してきたか、あるいはラインアップ図(マニュアルの一部)のミスがあった等が考えられる。 2.開放したままのフランジを連結されていると間違えた可能性がある。工事実施箇所だから厳重にチェックが必要なところを意識していない。全体に管理および作業に問題があったのではないか。 |
よもやま話 |
☆ 事故は、休日の夕方発生したが、仕事を早く終えようとして十分な確認をせずにガソリンを流した可能性もある。運転再開に当たっては十分な注意が必要である。この種の火災、事故は余りに多い。 |
当事者ヒアリング |
有、現地調査 |
データベース登録の 動機 |
保全工事完了未確認で、作業を開始して火事になった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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誤判断、誤認知、勘違い、手順の不遵守、連絡不足、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、使用、保守・修理、修理完了前に移送作業、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額1.1億円、組織の損失、社会的損失、油槽所閉鎖
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例(1995)、p.30、132-134
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1995)、p.276-277
古積博,市川武徳(安全工学協会編)、火災爆発事故事例集、コロナ社(2002)、p.180-182
宮下正一、危険物事故事例セミナー(1995)、p.11-12
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死者数 |
3 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
焼損タンクから43m以内の住宅のプラスチック製雨どいや壁が輻射熱で変形,変色.屋外タンク焼損.タンクローリー充填所部分焼.ガソリン244.7kL,軽油7.7kL被害. |
被害金額 |
1億1301万円(危険物に係る事故事例) |
全経済損失 |
JR線が一時ストップ |
マルチメディアファイル |
図2.油槽所レイアウト図
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備考 |
1)企業は、防災への意識を高め、再発防止を努めなくてはならない(仮に同施設を廃止しても類似の施設を別に持っている)。 2)内部浮屋根式タンクは、環境対策上タンクから可燃性蒸気が出るのを防ぐために取り付けてあるが、火災時の延焼防止にも役立つことが判った。 3)周辺住宅が近接していたため、住宅に放射熱による被害が出た。 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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