事例名称 |
フェノール樹脂製造中の反応液を抜き取ったドラム缶の破裂 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1990年05月30日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
フェノール樹脂製造反応が終了点に近づいたが減圧装置が故障して、減圧できなくなった。そのため、”減圧により水分を蒸発させて温度を低下させる”操作ができなくなった。そのため、ゲル化(固化)の進行が心配された。冷却のためクレゾールを投入し、内容物を順次ドラム缶に抜き出した。しばらくして ドラム缶が破裂した。以前から減圧能力が低下していたが放置していた。また、配管途中の点検窓からの目視だけで詰まりが発見できなかった。配管の定期点検は未実施であった。緊急時の運転マニュアルの整備や異常事象発生時の連絡体制を整備した。減圧装置に予備品を設置し能力低下に直ちに対応できるようにした。点検マニュアルも整備した。 |
事象 |
フェノール樹脂製造装置で反応中、減圧装置が故障した。反応器内容物を高温のままドラム缶に抜出し保管したところ、ドラム缶が破裂した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
重合・縮合 |
化学反応式 |
図2.化学反応式
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物質 |
フェノール樹脂(phenolic resin) |
事故の種類 |
破裂、漏洩 |
経過 |
1990年5月30日03:15 フェノール樹脂製造の第2段階の反応を開始した。反応温度は100℃であった。 04:42 反応が終了点に近づいた。減圧にして水分を除去して温度を65℃まで下げようとしたが、減圧装置が故障した。放置すると、ゲル化(固化)が進行し反応槽が使用不能になる。 05:40 緊急措置で冷却のためクレゾール500kg投入した。温度は93℃まで低下した。 06:10 クレゾール200kgを追加投入した。温度は89℃に低下した。 06:30 クレゾールを再投入の空間をあけるため、反応液をドラム缶4本に抜き出した。 07:10 クレゾール200kgを追加投入した。反応液をドラム缶2本に抜き出した。 07:35 アセトン300kgを再投入し冷却した。温度は 60℃になり、液状化した。 残りの反応液をドラム缶12本に詰め、密栓した。 08:13 ドラム缶が1本破裂した。 08:15 ドラム缶が2本破裂した。自衛消防隊が散水を開始した。 |
原因 |
減圧装置が反応液昇華物で閉塞した。そのため反応途中で反応物をドラム缶に抜出し、冷却もせずに密閉したため、ドラム缶内で反応が継続し、ドラム缶が破裂した。減圧能力は以前から低下していた。覗き窓からの点検では詰まりが発見できず放置してあった。 |
対処 |
冷却消火 |
対策 |
1.緊急時の運転マニュアルの整備 2.異常事象発生時の連絡体制整備 3.減圧装置に予備品を設置し、点検マニュアルも整備 |
知識化 |
1.日常点検での点検結果の評価、対応策を定めておく、通常とのずれがあった場合自己判断せず上司へ報告する。 2.異常時の対応が不確かだと事故が拡大する。 |
背景 |
1.当日の行動としては、事故が起こって当然の行動を取っている。反応のポテンシャルがある状態で、高温のまま抜出し保管したら、反応は続く。装置の緊急時対応でに追われて、現場としてはやむを得ないドラム缶の放置であろうが、反応危険の予知能力に全く欠けている。 2.減圧装置の性能低下を約3ヶ月も放置した。点検窓から見えるところは極く限られた部分である。そこが代表例とは限らない。以前の性能低下時でも覗き窓では分からず、開放したら詰まり箇所が見つかっている。 3.法の無視あるいは軽視があった。当該配管は、法で年1回以上の点検が義務づけられているにもかかわらずやっていなかった。 |
データベース登録の 動機 |
プラントでの保守点検の重要性を認識させる事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、理解不足、リスク認識不足、誤判断、状況に対する誤判断、重合反応、使用、運転・使用、機械設備の運転、非定常操作、緊急操作、危険回避の操作、不良現象、化学現象、発熱、圧力上昇、破損、破壊・損傷、破裂、組織の損失、経済的損失、直接損害額1.8億円
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1990)
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物的被害 |
ドラム缶3本破損,3本変形 |
被害金額 |
1800円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
備考 |
定常作業 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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