事例名称 |
ニトロセルロース製造で硝化工程終了作業中の発火、爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1968年04月26日 |
事例発生地 |
愛知県 武豊町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
ニトロセルロースの製造作業で、硝化終了後除酸作業を終え、硝化器からニトロセルロースを取り出した。硝化器の蓋を開けたところ、突然ニトロセルロースが分解、発火し、噴出した火炎により3名の作業員が火傷を負った。ニトロセルロースの中に未硝化物が残存していたことと、除酸が不十分であったことが原因と推定される。また、作業員の保護具が不十分であったことが被害を大きくした。 |
事象 |
硝化が終了したニトロセルロースを取り出すために反応釜の蓋を開けたとき、ニトロセルロースが発火、爆燃し、作業員3名が火傷を負った。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
溜出・取出し |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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化学反応式 |
図3.化学反応式
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物質 |
ニトロセルロース(nitrocellulose) |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1968年4月26日 作業員7名が朝から硝化作業を始め、ニトロセルロースの硝化を終了した。 14:00 次のバッチの硝化作業を始めた。 14:50 硝化が終了したので、硝化器の酸排出バルブを開いた。 15:00頃 硝化器内のバケットを5分くらい高速回転して生成したニトロセルロースの除酸を行った。 その後、硝化器内のニトロセルロースを取り出すため、廊下からワイヤを引いて硝化器の蓋を30~40cm持ち上げたところ、突然ニトロセルロースが分解、発火した。 火炎と酸ガスが噴出し、硝化器の蓋に妨害されて作業員のいた廊下に火炎が走った。 取り出し作業をしていた1名の作業員は耐熱衣を着用し、顔は保護面で防護していたが、退避しようとして背面を火炎の方に向けたため、耐熱衣で覆われていなかった背中に火傷を負った。また、保護面は後方が開いていたため、後方から火炎が進入して顔面も火傷を負った。 次の硝化の準備作業のために廊下で待機していた2名の作業員も足と顔面に火傷を負った。 |
原因 |
1.取り出し中のニトロセルロースに未硝化物が介在していたことと、除酸が不十分であったことが自然発火の原因と推定される。 2.万一の発火事故に備えて保護具を着用をしていたが、前面からの火炎を防護するためのものであり、退避時には背後から火炎を受けることを考慮したものでなかったために被害を大きくした。 |
対策 |
1.作業マニュアルを整備する。 2.ニトロセルロースの取り出し作業は遠隔操作で行うことが望ましい。遠隔操作でない場合は全身保護具を着用し、退避設備を完備する。 |
知識化 |
1..危険の顕在化要因が排除されていることを確認して作業を進める。 2.万一発火した時の状況を予測して、人身事故にならないような防護対策を講じる。 |
背景 |
1.ニトロセルロースのような硝酸エステルは、酸が残っていると非常に危険であることはよく知られており、硝化終了後十分除酸をしなければならない。この事故での硝化作業では、作業のマンネリ化によって十分除酸ができなかったのではないかと推定される。 2.また、万一の事故のために保護具を着用していたが、現実の退避行動に適用できないものであった。 |
データベース登録の 動機 |
危険性予知不足と作業のマンネリ化の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、マンネリ、価値観不良、安全意識不良、保護具不適正、ニトロ化、定常動作、不注意動作、除酸不十分、計画・設計、計画不良、危険作業を遠隔作業にしない、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、3名火傷
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.85
労働省労働基準局、工場災害の事例と対策、日刊労働通信社(1969)、p.492-493
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負傷者数 |
3 |
被害金額 |
8600円(損害保険料率算定会) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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