事例名称 |
接触改質装置の加熱炉スタート作業時の燃料ガスの漏れ込みによる炉内爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1986年01月21日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
石油精製の主要装置の一つである接触改質装置で爆発が起こった。反応器の触媒再生作業において、パイロットバーナー燃料配管に燃料ガスを導入すると同時に主バーナー燃料配管にも燃料ガスを導入した。主バーナー用配管の元バルブは二重化してあったが、上流側のバルブが開かれていた。閉止してあった下流側の元バルブの中に漏れるものがあったため、主バーナー用燃料配管に燃料ガスを導入した段階から、燃料ガスが炉内に漏れていたため、パイロットバーナーに点火している途中で炉内が爆発範囲に入り、爆発を起こした。 |
事象 |
石油精製の接触改質装置の触媒再生作業において、加熱炉のパイロットバーナーに点火している途中で加熱炉内で爆発が起こった。 パイロットバーナー: 主バーナーに点火するために設けられた小型のバーナーのことで、運転中は主バーナーの炎が消えないよう保火の役割をする。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
燃料ガス(fuel gas) |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1986年1月20日 反応塔、加熱炉チューブなど、触媒再生関連機器の内部の窒素置換を完了した。 21日09:00 ナフサ循環配管に窒素ガスを導入するためにコンプレッサーの運転を開始した。 09:30 加熱炉内にパージ用スチームの吹込を開始した。 09:50 スチームの吹込を停止した。 09:51 炉内加熱用バーナーのパイロットバーナー用燃料配管と主バーナー用配管に燃料ガスを導入した。 09:55 パイロットバーナーの点火を開始した。9本目のパイロットバーナーに点火したとき炉内爆発が起こった。 |
原因 |
1.加熱炉操作手順書に従わず、パイロットバーナーガスラインに燃料ガスを導入すると同時にメインバーナーガスラインにも燃料ガスを導入した。 2.メインガスラインの元バルブは二重化してあったが、上流側のバルブが開かれていたため、結果的に冗長システムとなっていなかった。 3.閉止してあった下流側の元バルブの中に漏れるバルブがあったため、メインラインに燃料ガスを導入した段階から、燃料ガスが炉内に漏れていた。 4.そのため、パイロットバーナーに点火している途中で炉内が爆発範囲に入り、爆発を起こした。 |
対策 |
1.運転員の教育・訓練の強化を図る。 2..操作手順書にパイロットバーナー点火前に主バーナー配管の元バルブ下流の圧力がゼロであることを確認することを明記する。 3.燃料ガス配管バーナーの元バルブの漏洩検査の強化などバルブの整備の強化を行う。 |
知識化 |
1.二重化による安全装置…例えばこの例の直列のダブルバルブとか計器室の出入口扉の2重化とか…は、そのために操作が面倒となると、作業者は操作を簡便にしようとしてシングルに…片側のバルブを最初から開けておくとか…しようとする傾向がある。そのため、教育によって二重化システムの重要性をよく理解させる必要がある。 2.バルブは漏れるものとの認識が必要である。 |
背景 |
教育・訓練の不備があったと推測する。 主バーナーへの燃料配管の元バルブが二重化してある意味やバルブが漏洩することがあることなどを、運転員がよく理解していなかった。あるいは、そのような教育をしていなかった可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
作業員が操作を簡便化しようとするヒューマンエラーの事例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、運転作業計画立案不適当、非定常操作、操作変更、操作手順変更、二次災害、損壊、漏洩・爆発、身体的被害、負傷、1名負傷
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情報源 |
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例100(1991)、p.9-10
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.60-61
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
炉北側炉壁倒壊,レンガ一部脱落. |
備考 |
接触改質装置:重質ナフサを原料とし白金ー塩素系触媒を用いて環化脱水素して、主にトルエン、キシレン等の芳香族を製造する装置。高オクタン価ガソリン原料装置として開発されたが、現在ではポリエステルやペットの原料であるパラキシレン原料の製造としても注目されている。 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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