事例名称 |
ポリプロピレン製造装置においてバルブの取扱い不適切により漏洩したへプタンの火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年07月26日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1989年7月26日、ポリプロピレン製造装置の溶剤回収工程溶剤スクラバーで火災が起こった。 溶剤スクラバーのローカルタイプの塔底流量計が詰まり気味のため工事を行うことになった。工事着工前の確認作業として、流量計ドレン弁を開けたところ、へプタンの流出が見られた。閉止している流量計の入口弁が完全に閉まっていないと判断した。ドレン弁を開けたまま入口弁を閉めようとしたが、逆にヘプタンが多く流出した。入口弁のハンドルを元に戻し、ドレン弁を閉めようとしたが、その前にヘプタンに着火し、火災となった。火災発生と同時に、緊急シャットダウンシステムが作動し、当該装置は緊急停止した。 |
事象 |
ポリプロピレン製造装置の溶剤回収工程溶剤スクラバーの塔底流量計が詰まり気味のため工事の準備を行っていた。そのときに流量計ドレン弁を開けたためヘプタンが漏洩して火災となった。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
物質 |
ヘプタン(heptane)、図3 |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
溶剤スクラバーのローカルタイプの塔底流量計が詰まり気味のため工事を依頼した。 1987年7月26日04:00 工事準備を実施した。 07:45 交替勤務番の交替のため、交替番間の引継ぎを行った。 08:25 流量計の入口弁を閉めた。流量計ブロックのドレン弁を開けた。 ドレン弁からへプタンの流出が見られたので、閉止している入口弁が完全にしまっていないと判断した。 ドレン弁を開けたまま入口弁を閉めようとしたが、逆にヘプタンが多く流出した。 08:30 火災が発生した。入口弁閉止はあきらめた。 08:30 火災発生と同時に、緊急シャットダウンシステムにより、当該装置は緊急停止した。 08:48 災害対策本部を設立し、防災活動を開始した。 09:00 公設消防の指揮下に入った。 09:29 装置に窒素ガスの導入を開始した。 10:00 鎮火を確認した。 |
原因 |
1.入口弁のハンドルのストッパーが変形していたため、弁を閉止しようとハンドルを回したときハンドルが正しい位置に止まらなかったため、ヘプタンの流出がとまらず、逆に流量が増える結果となった。 2.流出したヘプタンの着火原因は静電気と推定されている。 |
対処 |
1.緊急シャットダウンシステムを作動させて、装置の停止、緊急放出などを自動的に行わせた。 2.災害対策本部を設置した。 3.装置への窒素の導入を行った。 |
対策 |
1.バルブ操作などの各種安全教育の充実 2.機器類の点検強化 |
知識化 |
弁を開いたとき危険物が漏出した場合はただちにその弁を閉止して、危険物の漏出を止めてからほかの作業を行わなければならない。 |
背景 |
1.上流にある流量計の入口弁を操作するときは、ドレン弁を閉止しておかなければならないが、手順を間違ったために火災に発展した。バルブ操作の基本についての教育が不十分であったと思われる。 2.運転中はどんな場合にせよ、意図的なドレン切り作業以外は、ドレン弁を開放したままで他の作業を行うことは禁止である。 |
データベース登録の 動機 |
作業手順についての基本的知識の欠如がもたらした事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、使用、保守・修理、機能不備を放置、定常操作、誤操作、手順の食い違い、破損、変形、バルブ閉まらず漏洩、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額4500万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.33、50-51
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1990)、p.222-223
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.125-130
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物的被害 |
発火箇所を中心に約80平方mの範囲の電気,配管保湿,計装部品損傷,塗装はく離.へプタン燃焼量390リットル. |
被害金額 |
4500万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.工程フロー図
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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