事例名称 |
亀裂による熱媒体(硝酸塩)の漏洩のための無水フタル酸製造の化成器の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1957年10月15日 |
事例発生地 |
東京都 大田区 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
無水フタル酸製造装置の化成器で平常運転中に突然爆発した。化成器の溶接部の亀裂により、熱媒体の硝酸塩がもれ、プロセスで生成する黒色タール状物質と接触し爆発した。化成器は6年間使用しタール状物質が堆積しており、腐食も激しかった。副生成物の危険性を十分に評価していなかったためと考えられる。 |
事象 |
無水フタル酸製造装置の通常運転時に化成器に連続する第一熱交換器付近を爆心とし、激しい爆発が生じた。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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図3.単位工程フロー
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反応 |
酸化 |
化学反応式 |
図4.化学反応式
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物質 |
硝酸塩(nitrate) |
事故の種類 |
漏洩、爆発 |
経過 |
無水フタル酸製造装置では、ナフタレンを気化して化成器に空気とともに送入し、無水フタル酸に転化する。この反応は400℃付近の高温のため、これを冷却して結晶室で捕集する。平常運転中に、この化成器に連続する第一熱交換器付近を爆心として猛烈な爆発が生じ、化成器は横転し、同プラントは完全に破壊した。約200mはなれた一般民家、病院の窓ガラスを破損させた。 |
原因 |
爆発の発生は以下のように推定された。 1.化成器の熱媒体に使用している硝酸塩が、化成器の触媒充填パイプの取り付け溶接部付近の亀裂から熱交換器に流入し、その下部皿板付近にたまり、壁その他に付着した黒色タール状の不純物と混合して爆発した。 2.化成器は6年間使用し、タール状物質が付着し腐食も激しかった。 |
対策 |
材質、加工方法の再検討、メンテナンスの強化 |
知識化 |
1.熱媒体に使用されていた硝酸塩は酸化剤になることがある。 2.硝酸塩を使用する場合は漏洩時の混合危険まで考えて、プロセス設計や材質を考えねばならない。 |
背景 |
1.何らかの原因で亀裂を生じたこと、それを検知できずに運転を続けたことが最大の要因である。黒色タール状不純物は、硝酸塩と混合して過熱すると、300℃付近で激しい爆発を起こすことが確認された。また、この黒色タール状の副生成物はかなり大量に固まり、掃除していなかったという。 2.化成器の点検を行っていない気配があり、危険意識が希薄だったと考えられる。 |
データベース登録の 動機 |
潜在危険性を有する副生成物の発生例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、微量生成物の挙動、価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、保守・修理、点検不足、破損、破壊・損傷、亀裂・割れ、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、3名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額2400万円
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情報源 |
日本火災学会化学火災委員会、化学火災事例集(1)(1971)、p.143
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.50
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負傷者数 |
3 |
物的被害 |
プラントは完全に破壊.約200メートル離れた民家や病院の窓ガラスが割れた。 |
被害金額 |
2400万円 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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