事例名称 |
乾燥機のアルカリ洗浄の残存アルカリによる異常反応での乾燥機の爆発 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1989年03月20日 |
事例発生地 |
三重県 四日市市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
4-ニトロソ-o-クレゾールの製造装置で、合成後アルカリ洗浄、水洗浄後に乾燥して窒素雰囲気下の乾燥機に保管されていた。サンプリング後窒素雰囲気で再保管中に爆発が起こった。前回の生産終了後に乾燥機をアルカリ洗浄、水洗浄を行ったが、その際に残存したアルカリによる縮重合反応が原因と考えられた。 |
事象 |
4-ニトロソ-o-クレゾールの製造装置で、製品の乾燥を終了し,サンプリング後に20KPaGの窒素で封入し,静置してから約1時間15分後に爆発が起こった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
乾燥 |
単位工程フロー |
図2.製造設備フロー
|
図3.単位工程フロー
|
化学反応式 |
図4.化学反応式
|
物質 |
4-ニトロソ-o-クレゾール(4-nitroso-o-cresol) |
事故の種類 |
漏洩、爆発 |
経過 |
1. 当該乾燥機は前年末にアルカリ洗浄および水洗後,窒素保圧されていた。 2. 発災4日前の1989年3月16日より反応を開始,反応物を洗浄し,熱安定性を確認後,発災2日前の18日に遠心脱水処理をした。 3. 脱水処理後の固形物を乾燥機に移し,窒素20KPaGで加圧し,発災日である20日まで保持した。 20日 7:00~8:30 常温乾燥を行った。 8:30~20:30 高温乾燥を行った。 20:30 内圧を窒素にて常圧に戻し,内容物のサンプリングを行った。 20:45 サンプリングを終了し,乾燥機を停止させ,窒素で20KPaGに加圧した。 21:59 シューという噴出音とともに噴出した。 22:00 小爆発が起こった。 |
原因 |
4-ニトロソ-o-クレゾールに、前回の運転終了後に乾燥機をアルカリ洗浄を行い、さらに水洗浄でアルカリを洗浄したが、その時に残留した水酸化ナトリウムが新たに合成した4-ニトロソ-o-クレゾールに混入し,局部的に重縮合反応が起こり発熱した。その熱により周囲の製品が溶融した。急激な縮重合反応を誘発し,また,溶融していない部分が断熱効果をなし,反応が加速度的に進行して大量のガスを発生した。上部マンホールよりガスが漏れて室内に充満し,さらにマンホールが外れて大量にガスが漏れた。マンホールの飛散時の衝撃火花,ガス噴出による静電気,製品の自然発火等により着火,爆発した。 |
対処 |
防消火設備作動 |
対策 |
1.乾燥機のアルカリ洗浄を禁止する。 2.圧力検出器の二重化を行う。 3.運転員の教育,運転管理書の充実を図る。 |
知識化 |
アルカリが存在することが重縮合の引金になるなら、重縮合を起こす濃度を調査すべきであった。濃度が不明なら別の分離方法の検討が必要であろう。 |
背景 |
水酸化ナトリウムの混入が原因であるが、水酸化ナトリウムの混入が危険であることを管理者側が何処まで理解し、運転員に理解させていたかが問題であろう。4-ニトロソ-o-クレゾールは酸ないしアルカリの共存下で発熱的に重縮合しやすい性質を持っている。もし知らなければ、調査が不十分であり、知っていたならばプロセス設計、運転管理が問題であろう。 |
よもやま話 |
☆ アルカリ洗浄後に水洗浄してもアルカリは微量なら必ず残る。洗浄とは抽出操作なので、100%除去はできない。効率を考える必要がある。 |
データベース登録の 動機 |
不純物の混入による暴走反応の例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、混触危険他、誤判断、誤った理解、洗浄の本質、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、漏洩・爆発、組織の損失、経済的損失、プラント破損
|
|
情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.58-59
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1989)、p.185
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.186-190
|
物的被害 |
スレート4階建てプラント装置の壁などが吹き飛んだ.スレート,窓等が乾燥機内の半径約32mの範囲に飛散.鉄骨,スレート,窓,乾燥機,遠心脱水機,防爆電灯破損. |
被害金額 |
109万円(危険物に係る事故事例),約330万円(石油精製及び石油化学装置事故事例集) |
備考 |
事前検討不足。 WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/乾燥 |
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|