事例名称 |
軽質重油脱硫装置における圧縮機用緩衝器の突然の破裂による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1994年01月28日 |
事例発生地 |
香川県 坂出市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1994年1月28日 四国の製油所で、軽質重油脱硫装置の水素ガス圧縮機で予備機への切替えを行った。予備機の起動前点検では問題がなかった。切替え後、運転を始めた圧縮機の緩衝器が破裂し火災になった。長年湿潤な硫化水素ガス環境下で使用したため応力腐食割れを起こし、発生した事故である。このような条件下で用いる装置には、材料選定、設計、保守点検で十分な配慮が必要であった。 |
事象 |
軽質重油脱硫装置で、脱硫のための水素ガスを送り込む圧縮機は3機(A・B・C)あり、通常はそのうちの2機で運転していた。事故当日もA・B号機を使用していたが、A号機が不調のため待機中のC号機への切り換え作業中、C号機に付設されたリサイクル側の緩衝器が破裂着火した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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図4.単位工程フロー
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反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
水素(hydrogen)、図5 |
事故の種類 |
破裂、漏洩、火災 |
経過 |
1972年10月 当該装置の運転を開始した。 1994年1月28日08:30頃 係長がA号機からC号機への切り換え作業を指示した。 09:00頃 C号機の起動前点検を実施し、異常がなかった。 09:10頃 C号機の起動前操作を実施した。特に異常はなかった。 09:15頃 リサイクル側の負荷をA号機からC号機に切り換える作業を行い、現場操作は終了した。この時、計器室の係員が流量の大幅な低下を確認したため、負荷を元に戻すよう有線放送を使って呼びかけていた最中に破裂、炎上した。 10:04 鎮火を確認した。 |
原因 |
破裂した緩衝器は、長年湿潤な硫化水素ガス環境下にあり、この硫化水素により徐々に応力腐食割れが進み、この部分から通常運転圧力で破裂が起こった。 |
対策 |
1.腐食防止対策(緩衝器の材料改善等) 2.自主検査の強化 |
知識化 |
長年湿潤な硫化水素ガス環境下という過酷な条件下で使用するこのような装置の材質決定、設計、保守点検に改善が必要なことが分かった。 |
背景 |
1.緩衝器が硫化水素による応力腐食割れを起こしたことが基本要因である。これには材料選定、設計、保守点検の不備がかかわっている。 2.運転および保全側で運転環境の確認をしていない。したがって、使用材質が適正なものか否かの判断が出来ていない。かなり困難な作業であろうが、6.6MPaG、66℃、硫化水素を含む水素ガスの条件から、運転条件の確認はした方が望ましかった。 |
データベース登録の 動機 |
過酷環境下での応力腐食割れによる爆発事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、維持管理不良、計画・設計、計画不良、保全計画不良、使用、保守・修理、点検、破損、大規模破損、破裂、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、2名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額6900万円
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1995)、p.146-147
消防庁、危険物に係る事故事例-平成6年(1995)、p.28、112-115
危険物保安技術協会、危険物事故事例セミナー(1996)、p.129-130
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負傷者数 |
2 |
物的被害 |
飛散物が構内半径29mの範囲で飛散.高圧ガスコンプレッサーハウスのスレート屋根全損,水素コンプレッサー破損,鉄骨フロアーグレーチング類破損.保安林の焼失,放射線使用施設分析小屋壁体破損. |
被害金額 |
6900万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.状況写真
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図5.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・プラント機器と安全-設備管理/回転機器の安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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