事例名称 |
製油所の水素化脱硫装置におけるガスケットの誤使用による水素の漏洩 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1994年08月18日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1994年8月 水素化脱硫装置の定期修理工事を終えスタートした。定常運転になってから70分後に反応器熱交換器フランジから水素と軽質油が漏れ火災になった。ガスケットが工事用の仮ガスケットのままで、正規のガスケットでなかったことが原因であった。 |
事象 |
製油所の水素化脱硫装置で漏洩事故が起こった。同装置は定期修理後のスタートアップを終えて、定常運転を始めてから70分後、反応塔出口側配管ベントノズルにあるフランジのガスケットが破損して水素ガスと軽質油がミスト状に漏洩した。配管は反応塔の熱回収を行う熱交換器の中間配管だった。なお、反応は高温、高圧の水素雰囲気下で行われる。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
水素(hydrogen)、図3 |
軽質油(light oil) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
定期整備工事で反応器出口側配管のベントノズルから仮設配管を取り付けて洗浄作業を行った。この時ベントノズルのフランジ部にはゴム製ガスケットを使用した。 作業終了後仮設配管を取り外し、ベントノズルのブラインドフランジを取り付けて復旧した。 1994年8月18日08:56頃 水素化脱硫装置のスタートアップを終え定常運転を始めた。 10:06頃 反応塔の出口側配管ベントノズルのフランジのガスケットが破損して水素ガスと軽質油がミスト状に漏洩した。 10:19 消防署に連絡した。 スチームカーテンを使用し加熱炉への漏洩物の進入を防止した。装置を緊急停止し、除圧後に窒素置換を行った。 12:25 処理を完了。 漏洩量は水素が主成分のガスが3000N立方m、軽質油が約500Lと推定された。 |
原因 |
1.定期工事で開放したフランジを復旧するときに、仮配管に使用したゴム製ガスケットを正規のSUS製に換えることなくそのまま使用した。そのため、ゴム製ガスケットは高温高圧により徐々に硬化し破壊した。協力業者間の連絡の悪さがあった。 2.ガス検知器が地上付近に設置されていたため、空気よりも軽いガスの漏洩を検出できなかった。正しい作業手順を図2に示した。 |
対処 |
1.スチームカーテンにより加熱炉を遮断。 2.水素化脱硫装置の緊急停止、除圧と窒素置換。 |
対策 |
1.復旧作業に関する作業工程書の充実。 2.工事担当者と協力会社社員の教育訓練の強化。 |
知識化 |
工事用の仮の資材のままで運転にはいることは禁止されているはずであるが、時には運転用資材に取替えられずに事故になることがある。必ず仮の資材を交換する仕組みや仕掛けを作ることが重要である。 |
背景 |
1.工事仕様書あるいはその実施に伴うミスと思われる。機器ごとの工事管理や工事手順書が整備されていない。 2.実運転で使用するガスケットは運転会社の責任で管理する。下請け業者は指示されたものを使うだけのことが多い。管理責任の意識とそれを実施する手段に問題があったと推測する。 |
よもやま話 |
☆ ガス検知器は通常上方には置かれていない。建屋内であるなら軽質ガスの漏れが想定される場合、上方にも必要であろう。 |
データベース登録の 動機 |
仮ガスケット使用による発災例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、工事管理計画不良、使用、保守・修理、修復時注意不足、破損、変形、ガスケット破損、二次災害、損壊、漏洩
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1995)、p.156-157
危険物保安技術協会、危険物事故事例セミナー(1996)、p.143-144
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1994)
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物的被害 |
可燃性ガス(水素約90%)約3000N立方m,軽質油(ミスト状)約500L漏洩 |
被害金額 |
約1万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図2.作業手順図
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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