事例名称 |
蒸留釜洗浄中に圧力が上昇して破裂、爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年02月17日 |
事例発生地 |
京都府 京都市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
各種の化学品を製造する工場の蒸留設備の一つで爆発事故が起こった。単蒸留と精留が切り換えられる蒸留設備の事故である。バッチの生産を終えて蒸留装置にメタノールを張り、加熱蒸発させ最初に単蒸留系を洗浄していた。次に精留系の洗浄にはいる時、誤って発生蒸気のバルブを全て閉めたため、圧力上昇して破裂し、爆発火災になった。 |
事象 |
各種の化学品を製造販売している研究所と名乗る製造工場で爆発事故が起こった。一つの蒸留釜をバルブの切換で、単蒸留と精留に使い分けている蒸留設備で、バッチ運転の終了後洗浄していた。そのためメタノールを加熱蒸発させている時に、発生蒸気のバルブを全閉して、圧力上昇させた。蒸留装置が破裂し、噴出したメタノール蒸気が引火し爆発・火災になった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
メタノール(methanol)、図3 |
事故の種類 |
破裂、漏洩、爆発・火災 |
経過 |
1. ブチルメタトルイジン製造を終え、蒸留装置を洗浄するため、蒸留釜にメタノールを入れた。 2. 最初に単蒸留系を洗浄するため、精留塔行きの蒸気配管と精留塔からの液戻り配管の連絡バルブを閉め、単蒸留留出バルブを開けて、スチーム加熱でメタノールを蒸発させ洗浄を開始した。 3. 次に精留塔側の洗浄を行うため、単蒸留側の留出バルブを閉めた。 4. この時、精留塔との連絡バルブを開としなかった。そのため、蒸留釜には蒸発したメタノール蒸気がたまり加圧状態になり、最後に蒸留釜が破裂し、蒸気が噴出した。 |
原因 |
作業の思い込みによるヒューマンエラーが原因である。作業員は最初の単蒸留系の洗浄時に精留塔側との連絡バルブ2個は開放したつもりだった。そのため、洗浄の切換時にバルブを開けることを考えなかった。結果として、バルブを閉めたまま加熱したため、内圧が増加し装置が破裂した。 |
対処 |
自衛消防及び公設消防 |
対策 |
1.蒸留釜の発生蒸気の出のバルブを全閉にしないように、単蒸留釜留出と精留塔への蒸気配管のバルブ2ヶを3方弁に切り換える。 2.安全弁の設置を行う。 3.作業マニュアルの整備と教育を行う。 設備面で本質安全を考えるならば、使用スチームの圧力と塔内組成から考えられる到達可能圧力により機器の設計圧を決める、あるいは安全弁を設け蒸留釜の破裂を防ぐ必要があるであろう。 |
知識化 |
化学工場は危険なものという認識が不足している。工場の責任者も含めて安全への認識向上の必要がある。 |
背景 |
全くのヒューマンエラーか、それとも運転指示の不明確であったかの何れかと推測する。さらに、温度、圧力監視不十分のために事故を防止出来なかった。また、設備面でいえば、減圧か大気圧で使用するため、安全弁の設置は法的には不要のため、安全弁の設置がなかった。 |
よもやま話 |
☆ 人手不足のため、監視業務がおろそかになっていたのが原因との説もある。 |
データベース登録の 動機 |
発生蒸気のバルブを全部閉にしたため圧力が上昇して破裂した誤操作の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、計画・設計、計画不良、定常操作、誤操作、バルブ開閉ミス、不良現象、化学現象、圧力上昇、破損、大規模破損、破裂、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、2名負傷、組織の損失、経済的損失、損害額1,400万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成7年(1996)、p.68-70
石原敬之、第43回全国消防技術者会議資料(1995)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
2 |
物的被害 |
工場、隣接事務所の屋根、ガラス、防火戸損壊.蒸留釜1基大破、蒸留釜1基及び20号タンク1基損壊.危険物配管及び電気配線等損壊. 火災により隣接の畑のビニールハウス3張りの各一部焼損. 爆発により住宅15棟のガラス破損. |
被害金額 |
1,400万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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