事例名称 |
重油脱硫装置の加熱炉入口配管のベントノズルにホースを取り付けたままスタートして火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年01月06日 |
事例発生地 |
宮城県 仙台市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
新設した重油脱硫装置が試運転中に緊急停止をした。その原因調査後の再スタート時に、加熱炉入口配管のベントノズルから高温の油が漏洩し、火災になった。原因は、調査時に取り付けたバルブを放置した上にベントバルブを閉めなかった工事ミスと運転開始時に不具合を見落とした運転担当のラインアップミスによる。 |
事象 |
約半年前に完成した重油脱硫装置で漏洩火災事故があった。約1ヶ月前の試運転中に緊急停止した。原因調査のため、停止中に加熱炉入口配管にあるベントノズルにホースを取付け、ベントバルブを開にした。そのままスタートしたので、加熱炉の入口配管のベントノズルから運転直後に漏洩が起こり火災になった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
減圧軽油(重油)(vacuum_gas_oil(fuel_oil)) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1996年9月 装置は完成し、9月下旬より試運転に入った。 12月 試運転期間中に緊急停止機構の不具合で緊急停止した。 原因究明のため、加熱炉入口のバルブ付きのベント配管に高圧ホースを接続し、窒素を流して調査をした。 1997年1月 本格稼働のため準備作業を行っていた。発災箇所の温度は200℃以上になっていた。 6日 接続ホースが外れ、高温の油が噴出した。 |
原因 |
ヒューマンエラーである。経過欄に書かれてないように、接続されたホースは取り外されることもなく、ベントバルブも閉められなかった。高温になり、加圧されれば、何処かで漏洩が起こるのは当然である。もう少し正しく表現すると、スタート時の基本動作であるラインアップ(全てのバルブの開閉の確認)のミスで、運転員一人のヒューマンエラーではなく、運転クルー全体のヒューマンエラーであろう。高圧ホースをつないだまま、運転に入るのは異例なことであろう。 |
対処 |
自衛消防(3点セット)及び公設消防 |
対策 |
1.工事記録をしっかり残すなど工事管理システムの構築。 2.ラインアップなど従業員の運転管理に対する再教育。 単純な人為ミスと捉えないで組織の管理の改善が必要と捉えることが最重要な対策であろう。 |
知識化 |
1.工事などの非定常作業において記録を残し、記録に基づき復旧させる重要さを示している。 2.運転開始時のラインアップは、一見見えない場所まで丁寧に確認を取る必要がある。 |
背景 |
工事終了時のホースの取り外しをしなかったこととバルブ開を見落とした工事管理のミスと、スタート時のラインアップで異常を見落とした運転管理ミスの2つのミスがあった。基本が欠落していた考えられる。当該のベントノズルは建設上の必要で設置されたノズルで運転とは無関係であり、しかも見つけにくいところに設置されていた。そのようなバルブを臨時に使用する時の配慮に欠けている。記録に残して、確認をするような習慣はなかったとすれば、事業所全体の管理の重大欠陥があった可能性がある。 |
よもやま話 |
☆ この事業所では『事故に対する感性を磨く』を唱えていたが、具体性に欠けていたのではないかという指摘もある。 |
データベース登録の 動機 |
作業確認が具体的になされていたか疑問を持たれる例 |
シナリオ |
主シナリオ
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手順の不遵守、手順無視、作業手順無視、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、損害額3500万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成9年(1998)、p.40-43
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例‐Case 100‐(1999)、p.8
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
重油直接脱硫装置蒸留系統の一部(約300平方m)焼損.架溝の横梁及び床板の一部が熱変形、変色.計装設備(ダクト・ケーブル)及び照明設備燃焼.配管保温材被覆焼損. |
被害金額 |
約3,500万円(消防庁による) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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