事例名称 |
重油直接脱硫装置の加熱炉における偏った加熱に起因する加熱炉管の破損による漏洩、火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年04月26日 |
事例発生地 |
沖縄県 与那城町 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
10年間も加熱炉入口側バーナーだけを点火する負荷の偏った運転をした。さらに、原油の種類が変わったにもかかわらず加熱管の適正な負荷分配を行わなかったため、一部の加熱管が破裂した。過去の経験から独善的に判断し、コーキングの点検を部分的にしか行っていなかった。本来温度の高い出口側に温度センサーが集中していて、今回の運転で高温となっていた入り口側には温度センサーがほとんどなかった。以上からコーキングが発生し開口を発生させた。 |
事象 |
重油直接脱硫装置の加熱炉の入り口側加熱炉管に開口が生じ、加圧加熱された原料油が噴出、爆発的に燃焼した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
水素(hydrogen)、図3 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1996年4月17日 軽質原油に切り替え 4月26日21:35 火災発生 21:37 自衛消防隊出動 22:00 自治体消防到着 27日02:00 鎮火 |
原因 |
加熱炉入り口付近にバーナ加熱を集中したため、コーキングが成長した。伝熱低下により局部的に温度が上昇して材料強度が低下した。 |
対処 |
自衛消防隊による消火活動 |
対策 |
1.運転管理の改善 2.温度測定管理の改善 3.設備管理の改善 |
知識化 |
1.運転管理上必要な検査箇所は全体を網羅することが重要で、勝手な思いこみに縛られてはならない。 2.センサーは運転状況に対応した適切な位置に設置しなければ効果が得られない |
背景 |
10年間も10本あるバーナーのうち、入口側6本のバーナーだけを点火して、負荷を偏らせた運転をしてきた。さらに、油種変更で加熱炉の負荷が変わったにもかかわらず、適正な燃焼指示をしなかった。炉の設計ではコーキング防止を考えて、熱流束が一定値を越えないように配慮する。それを無視して入口側だけに負荷をかけスキン温度を上げてコーキングを起こしたと推定する。完全な指示ミスであろう。 コーキング: 加熱炉管内部流体が分解し、管壁に炭素の層を作る現象。高温などの条件で加速される。 |
よもやま話 |
☆ 通常コーキングはプロセス温度、スキン温度が上がる出口部分に表れることが多い。そのため、温度計は出口側に多く配置される。多数のバーナーがある炉では、バーナーの負荷調整は行われるが、入口側だけが点火されていた例は他にあるのだろうか。 |
データベース登録の 動機 |
点検箇所や計測位置が不適切だったための事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、化学現象、コーキング、破損、大規模破損、漏洩、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失、直接損害額1.9億円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成8年(1997)、p.138-139
事故調査委員会、事故調査報告書(1996)
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例‐Case 100‐(1999)、p.7
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
保温材塔飛散(約80m四方). 施設の被害状況:FU-301本体(加熱炉)及び配管、排ガスダクト焼損、集合煙突の塗料焼損、RE-301Aの保温板金焼損. |
被害金額 |
約2億円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・プラント機器と安全-設備管理/静止機器の安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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