事例名称 |
分解ガソリン水添設備の停止作業中の反応器フランジより漏洩、火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1993年07月03日 |
事例発生地 |
大阪府 高石市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
分解ガソリン水添装置の停止作業中に水添反応器の上部フランジからガス洩れ、着火した。スタート時のボルトの締め付け力管理が不十分で締め付け力不足気味だったところに、降温,降圧のため締め付け力が低下したなどが原因で漏洩した。 |
事象 |
分解ガソリンの水添装置で停止作業のため、降温降圧作業に入った。その作業中に反応器フランジ部より水素と炭化水素が洩れ、火災が起こった。 分解ガソリン: エチレン装置で副製する熱分解ガソリン。ベンゼン、トルエン、キシレン類、スチレンを主成分とする。水添の主な目的は脱硫とスチレンなどオレフィンの飽和である。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
水素(hydrogen)、図3 |
分解ガソリン(pyrolysis gasoline) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
分解ガソリンの水添装置(圧力2.8MPaG、温度350℃)で装置停止のため、降温、降圧操作を行っていた。反応器1.3MPaG、温度150℃になった時、反応器上部フランジからガスが洩れ、出火した。着火源は噴出時の静電気発生と推定された。 |
原因 |
三つの原因が重なった結果と推定された。 1.降温の結果ボルトの締め付け力が低下した。 2.フランジ面に微少な片締めがあった。 3.ガス組成が高濃度の水素に変化し洩れやすくなった。 |
対処 |
系内への窒素吹込み、消火器による初期消火。公設消防の散水 |
対策 |
フランジの締め付け管理にトルク管理を導入し、定量化する。 |
知識化 |
スタート時の締め付け力不足は、平常運転中に漏洩がなくとも、条件変化時に漏洩することがある。締め付け力の定量管理が重要である。 |
背景 |
事故発生原因に示した原因のうち、2件の遠因は以下のように推定された。 1.スタート時のボルト締め付け力が不足していた。 2.締め付けトルクの定量管理が行われていなかった。そのため、締め付け力にばらつきを生じた。 |
よもやま話 |
☆ 降温時に降温速度が大きすぎて、締め付け力が低下したケースもある。 |
データベース登録の 動機 |
スタート時のフランジ締め付け力不足が原因で停止時に洩れた事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、マンネリ、計画・設計、計画不良、工事計画不良、使用、保守・修理、ホットボルティング、機能不全、ハード不良、締付け力不足、二次災害、損壊、漏洩・火災
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成5年(1994)、p.86-87
産業と保安、Vol.9(No.38)、p.4-5(1993)
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成6年版‐(1994)、p.170-171
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
被害金額 |
1万円未満(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・プラント機器と安全-設備管理/静止機器の安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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