事例名称 |
チタン工場における溶融マグネシウムの漏洩による爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年12月13日 |
事例発生地 |
兵庫県 尼崎市 |
事例発生場所 |
金属工場 |
事例概要 |
スポンジチタンの製造工場で爆発火災が起こった。溶融マグネシウムが漏洩し炎上、さらに冷却水と反応し爆発炎上した。マグネシウムは水と反応して水素を発生し、水素が爆発した。溶融マグネシウムは一度漏洩すると対処が大変難しい。 |
事象 |
スポンジチタン製造工程において、塩化マグネシウム保温炉から回収中の溶融したマグネシウム(約800℃)が漏洩し、約5トンが床面に流出し炎上した。さらに溶融マグネシウムがビニル製の冷却水配管を溶融したため冷却水と反応し、爆発、炎上した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
その他 |
物質 |
マグネシウム(magnesium)、図2 |
水素(hydrogen)、図3 |
事故の種類 |
漏洩、爆発・火災 |
経過 |
1998年12月13日17:15頃 出火した。 17:24 119番通報をした。 現場偵察で爆発の危険のないことを確認した。(消火方法は散水が選択できず、特殊な方法に限られるので、安全確認後でなければ消火不可能だった。) 20:55頃 消火作業開始し、乾燥塩(20kg入りビニール袋)約4トンを投入し火災を鎮圧し、電気配線は消火器で鎮圧した。 14日02:04 鎮火を確認した。 |
原因 |
溶融マグネシウムの回収作業中に操業鍋が何らかの原因で移動し、マグネシウム吸い上げ用の配管が外れた。アルゴンガスで加圧された操業鍋から溶融マグネシウムが床に漏れ事故となった。冷却水との接触で水素が発生し爆発炎上となった。 |
対処 |
爆発危険の無いことを確認後乾燥塩で火災を抑制した。 |
知識化 |
溶融マグネシウムが漏洩すると対処が非常に困難なことがわかる。まず漏洩しないよう細心の注意を払うことと、万一の対策も準備しておくべきである。 |
背景 |
操業鍋が移動して、溶融マグネシウムが操業鍋から漏洩したことであるが、何故移動したかは不明である。 |
よもやま話 |
☆ 溶融金属は高温であり、漏れたら大事になるのが分かっていると思うのだが、漏洩時対策は取られているのだろうか。なお、水蒸気爆発説を採っている資料もあるが、ここでは近代消防などに従い水素発生説とした。 |
データベース登録の 動機 |
高温の溶融金属が漏洩したらどうなるかの例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、プロセス設計不良、定常操作、誤操作、想定外操作、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、被保険被害額70億円
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情報源 |
中村順、安全工学、No.226、p.43-48(2002)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
鉄骨スレート葺2階建て工場(建築面積6000平方m・延べ床面積12,000平方m)の外壁と屋根が壊れ、保温炉周辺約2000平方m焼損 |
被害金額 |
被保険被害額 70億円(スイス再保険会社による) |
社会への影響 |
1998年12月13日19:00頃 尼崎市公害対策課の職員が到着し、工場周辺の数ヶ所で塩素検知管による簡易測定を行なったが、塩素ガスは検出されなかった.工場内には従業員9人がいたが、マグネシウムが漏れ出したのを見て避難し無事であった. 18:10、有害な塩素系ガス発生の恐れがあるとみて尼崎市南東部一帯の住民らに防災スピーカーや広報車で避難を呼びかけた. |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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