事例名称 |
発泡ポリスチレン製造装置において停電のため反応が暴走して噴出物が着火 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年10月11日 |
事例発生地 |
茨城県 神栖町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
発泡ポリススチレン装置で停電があり、重合反応器の冷却水と攪拌機が停止した。重合禁止剤の投入ができずに暴走反応になった。大気放出管から脱圧したところ、放出したスチレン重合物が発火して周囲が焼損した。断路器の絶縁油の管理、非常用ポンプの維持管理など安全管理に問題があった。 |
事象 |
発泡ポリスチレン製造装置で火災が起こった。停電により重合反応器の冷却水と攪拌が停止し、反応が暴走して圧力が上昇した。重合禁止剤の投入ができず大気放出管からガスを放出した。放出したスチレン重合物中のガスが着火し、付近にあった電気ケーブル等が焼失した。着火源は静電気と推定される。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
重合・縮合 |
化学反応式 |
図3.化学反応式
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物質 |
ポリスチレン(polystyrene)、図4 |
スチレン(styrene)、図5 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1995年10月11日08:12 構内の一部が停電し、重合器の冷却水と攪拌機が停止した。重合反応中の反応缶内の圧力が上昇した。 08:23 重合禁止剤の投入ポンプが動かなかった。重合禁止剤の投入に失敗した。 ただちに、払い出し弁を開いたが粘性のため流れ出なかった。 通常の0.05MPaGから0.17MPaGに上昇した。 08:35 破裂防止のため大気放出管の弁を開放した。 08:40 放出管の先から噴出したスチレン重合物が着火した。 近くにあった電気ケーブル等が焼失した。 08:42 公設消防に通報。5台26人出動した。 09:15 鎮火を確認した。 |
原因 |
1.停電の原因は、電源幹線の断路器の絶縁油が劣化して地絡したことによる。 2.重合停止剤投入用のポンプの作動不良は点検整備不十分による。 3.火災の原因は、大気放出時の静電気とされた。 |
対処 |
1.停電により消火ポンプが動かないため屋外消火栓と屋内泡消火設備が作動せず、事業場関係者が消火器22本を使用して消火に当たった。 2.化学車5台と26人が出動するも、給水栓等が使えず、タンク車1台のみから放水して消火した。 |
対策 |
1.消火設備のポンプ用電源系統を二重化。 2.エンジンと電動機の共用型の消火栓用ポンプを新設。 3.保安電源専用の発電機を新設。 4.重合禁止剤用にタンクを設け窒素加圧。 5.大気放出管にバッファタンクを設置。 6.電気設備の点検検査項目に絶縁性の診断を追加。 |
知識化 |
1.非常用の保安電源発電機を備えていたとしても、その電源の送電系統が1つでは、その送電系統が故障してしまうと送電できない。変電所などの給電施設の障害も同様である。 電気、空気、油圧などの動力系統は、二重化と分散化が欠かせない。 2.消火設備を用いない消火方法を想定しておく。 |
背景 |
安全設計、安全管理の意識が低いように見受けられる。絶縁油は長期使用すれば劣化するので、定期的に点検をすべきであり、緊急時注入の重合停止剤の注入は常に稼働出来るように整備するのが当然である。出来るならばポンプはやめてもっと信頼度の高い方法を採用する。緊急時の放出は可能なら、燃焼処理をするべきであり、それが出来なければ、安全な場所、例えば高所に放出すべきである。 |
データベース登録の 動機 |
幾つかの安全管理の不備によって火災になった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、電気故障、停電、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、損害額8000万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成7年(1996)、p.222-223
塚本 保、危険物事故事例セミナー(1997)、p.15-23
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
重合棟内重合器及び関連配管、外壁、ケーブルラック、配線類. |
被害金額 |
8,000万円(消防庁による) 3,700万円(鹿島南部地区消防本部による) |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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図5.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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