事例名称 |
融解のため温蔵庫で加熱中のドラム缶に入ったアクリル酸の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年03月06日 |
事例発生地 |
兵庫県 加古川市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
紫外線硬化樹脂の製造に使用するアクリル酸を融解するため、ドラム缶3本を温蔵庫に入れて加熱していた。そのうち1本が異常に膨れており、これを搬出しようとしたところガスが噴出した。このため、屋内消火栓で放水して冷却中、爆発した。アクリル酸の危険性を作業員に十分認識させていたか問題である。簡単な設備対応で事故は防げたろう。 |
事象 |
紫外線硬化樹脂の製造に使用するアクリル酸を融解するため、アクリル酸の入ったドラム缶3本を温蔵庫に入れて加熱していた。そのうち1本が異常に膨れており、これを搬出しようとしたところガスが噴出した。このため、屋内消火栓で放水して冷却中、爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
溶融・溶解 |
物質 |
アクリル酸(acrylic acid)、図2 |
事故の種類 |
漏洩、爆発 |
経過 |
1. アクリル酸とエポキシ樹脂のドラム缶を温蔵庫に搬入した。 2. 3本のアクリル酸のうち1本が異常に膨れていた。 3. これを搬出しようとしたところ、ドラム缶からガスが噴出した。 4. 屋内消火栓で放水し、当該ドラム缶を冷却した。 1998年3月6日 22:42 ドラム缶が爆発し、3名が負傷した。 22:44 消防に通報した。4台13人が出動した。 22:51 処理が完了した。 |
原因 |
温蔵庫に入れた3本のドラム缶のうち、1本が加熱用のスチーム配管に接触していた。そのため接触部が高温となり、内容物のアクリル酸が重合反応を起こした。反応熱により液が気化したためドラム缶内の圧力が上昇し、ついには破裂した。 |
対処 |
1.ドラム缶を屋内消火栓より放水して冷却した。 2.負傷者を搬送した。 3.公設消防に情報提供した。 |
対策 |
1.工場内での融解作業を中止し、融解した状態の原料を搬入する。 2.アクリル酸の使用手順書を作成する。 3.作業員の教育と訓練を実施する。 |
知識化 |
1.加熱温度が融点よりもさほど高くなければ、対流及び伝導によって融解した部分の温度は融点に近い同じ温度に保たれるが、融解を急ごうと加熱温度を高くしたり、熱源と接触していたりすると、融解した液体の温度や接触した部分の近傍は、たやすく融点よりも高い温度になる。熱的に不安定な物質であれば、反応の開始につながる。 2.簡単に設備対応が取れるものなら、人間の注意力に頼むより、設備の改善をすべきだ。 |
背景 |
管理者側がアクリル酸を高温にすることの危険性を理解し、それなりの設備にしていたかが問題であろう。直接にスチーム管に接触させないよう仕切りのバーなどを入れればそれで十分だろう。作業員に危険性の教育をしてあれば、ヒューマンエラーということだろうが、やはり設備で対応すべきであろう。安全管理の不徹底が考えられる。 |
よもやま話 |
☆ どの事象でも同じことが言えるが、事故を起こしてからの対策は、最初から考えて準備しておくものより重くなる。この事象では、工場内の溶融作業を止めて、溶融した原料を搬入することにしたが、コストとか、工場に持ち込んでから固化することとか、新たな問題を生むことにならないか少し心配である。 |
データベース登録の 動機 |
高温部を間違って直接接触させたために、ホットスポットができて、異常反応を起こした例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、定常動作、不注意動作、蒸気管に接触させた、不良現象、化学現象、異常反応、破損、大規模破損、破裂、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、3名負傷
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成10年(1999)、p.86-87
平成10年重大災害の概要、安全年鑑、p.272
産業安全研究所資料(非公開)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
3 |
物的被害 |
温蔵庫全壊,隣接事務所等2棟小破.北側と東側半径約15m範囲内ガラス等破損. |
被害金額 |
約300万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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