事例名称 |
重油直接脱硫装置の緊急停止操作中における原料油供給ポンプの火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年10月10日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
重油直接脱硫装置で、循環ガス圧縮機故障のため緊急停止に入った。原料供給ポンプを吐出弁閉止以前に停止したため、プロセスから高温の原料油がポンプまで逆流し、メカニカルシールを破損させ、漏洩火災事故になった。運転停止時のマニュアルは事前に十分に検討されていたか、逆止弁の不調は予測できなかったか、などが問題となる。 |
事象 |
製油所の重油直接脱硫装置で、反応系に使用する水素の循環ガス圧縮機の不調により同装置が緊急停止した。その緊急停止の作業中に、原料油が供給ポンプに逆流し,メカニカルシール部が破損した。漏れた原料油が自然発火した。ポンプ吐出の運転条件は、17MPa、310℃であった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1991年10月10日02:10 循環ガス圧縮機のアラームが点灯し,運転員が現場に向かった。 02:20 圧縮機駆動用スチームタービンの復水器の真空度の低下を発見した。 02:23 重油直接脱硫装置の運転停止を決定した。 02:25 計器室に運転員を召集し,作業手順確認の後,遠隔操作にて運転停止を開始した。 02:35 現場確認に行ったところ,原料油供給ポンプのメカニカルシール部分からの出火を発見した。 04:15 原料油供給ポンプ付近の火災が鎮火した。発災したポンプの上部にある空冷式熱交換器への消火活動は継続した。 08:55 発災ポンプおよび空冷式熱交換器の火災が完全鎮圧された。 |
原因 |
手順が食い違ったことと逆止弁が効かなかったことにより発災した。 1.運転停止操作の際に、原料油加熱炉手前の流量調節弁の閉止がポンプ停止より遅れ、高温高圧のプロセス内の原料油が逆流した。 2.原料油供給ポンプ吐出側の逆止弁がカーボンの付着により機能しなかったため、ポンプまで原料油が逆流した。 3.ポンプが逆回転しメカニカルシールが高温に曝された。そのため、メカニカルシールが損傷し,原料油が噴出、自然発火した。 4.原料供給ポンプの上部の空冷式熱交換器に延焼,チューブが破損,内部液体が噴出し引火した。 |
対処 |
1.自衛消防隊,共同消防隊が出動し,消火,放水冷却活動をした。 2.公設消防隊による消火活動が行われた。 |
対策 |
ポンプ吐出弁の遠隔操作化,シャットダウン時の施設全体の操作およびマニュアルの見直し,一定期間毎の機器の機能検査や取り替えのマニュアル化,漏洩センサーの設置,ポンプ上部の耐熱化,ポンプに注目したパトロールの充実等を行う。 |
知識化 |
緊急時の対応が十分に検討、訓練されていないと緊急時の対応操作が事故を招くことがある。 |
背景 |
ポンプ停止とバルブ閉止の手順が逆になっている。ヒューマンエラーか運転指示の間違いであろう。逆止弁は逆流防止のため設置するが、時に逆流を防止できないことがある。まして重油では固形分や粘着物質で漏れる確率は高い。逆止弁が漏れることを前提とした停止マニュアル、停止操作が必要である。 |
よもやま話 |
☆ そもそも運転停止に至った循環ガス圧縮機の不調の原因についてはいずれの報告書にも触れられていない。 |
データベース登録の 動機 |
異常に対処するための停止操作中の原因となった異常とは別の部分での事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、取扱い不適、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、非定常操作、緊急操作、緊急停止、機能不全、ハード不良、逆止弁洩れ、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、損害額9,000万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成3年(1992)、p.68-70
青木靖彦、KHKだより、No.36、p.61-63(1992)
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例100-No.2-(1994)、p.10-11
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.54-55
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
第10重油直接脱硫装置延べ200平方m焼損.ポンプメカニカルシール等,空冷式冷却器,関係配管等,焼損変形. |
被害金額 |
9,000万円(消防庁) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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