事例名称 |
水素製造プラントの定期修理中における逆流による水素ガスの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年05月24日 |
事例発生地 |
三重県 四日市市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
水素製造プラントで二酸化炭素吸収塔をの内液をタンクに移送していた。突如タンクが爆発した。直接的な原因は作業員の吸収塔塔底レベルの確認を怠ったこととされているが,水素ガスの予備タンクへの流入の危険性を事前に検討していたかどうか疑問である。 |
事象 |
製油所の水素製造プラントで、定期修理中に二酸化炭素吸収塔の炭酸カリウム水溶液を一時的に退避させるタンクへの溶液抜き出し中に、タンクに水素ガスが流入し,爆発が起こった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
水素(hydrogen)、図2 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1996年5月23日 運転停止をした。 24日07:05 前直者から引き継ぎを受けた。 07:30 定期修理に関するミーティングを行った。 08:00頃 ミーティングが終了後,すぐに水素製造プラントの溶液抜き出し作業担当者が作業マニュアルの読み合わせを約20分間行った。 08:10頃 炭酸カリウム水溶液の炭酸カリウムタンクへの抜き出し作業を開始した。ポンプが空引きを起こしたため,吐出弁を調整しながら作業を続けたが,空引きが続いたためポンプを停止し,抜き出し作業を一時中断した。数分後に炭酸カリウムタンクが爆発した。屋根部分が隣接事業所の敷地に飛散,爆風および飛散物により隣接事業所の建物や車両が一部破損した。 |
原因 |
.二酸化炭素吸収塔の水溶液を抜き出してくると、塔底液面が低下してくる。その最後の液面が確認できるポンプ吸引側にある熱交換器シェル側の炭酸カリウム水溶液のレベル低下の確認を怠り,ポンプが空引きしていた。すぐにポンプの停止と移送弁の閉止を行わなかったため,二酸化炭素吸収塔の水素が炭酸カリウムタンクに流入した。その勢いでタンク内でスケール,粉じん,水溶液が吹き上げられ,帯電状態で沈殿し,壁面または液面でスパークしたと考えられる。 |
対策 |
抜き出し作業の改善,マニュアルの見直しとマニュアル遵守の教育を行う。 |
知識化 |
マニュアルを遵守させるという人間の努力に期待するよりは、危険要因の排除が設備面で合理的に行われるならば、危険要因の排除をする方がよい。 |
背景 |
水素ガスが存在する二酸化炭素吸収塔を定期修理前に窒素ガスで置換していなかった。作業方法指示の逸脱があった。また、ポンプの空引きに対する処置が適切でないなど運転操作に問題がある。 |
後日談 |
事前の作業マニュアル読み合わせの際に,タンクレベルに注意すること,抜き出しバルブは小開とすること,ブロックバルブはあらかじめ絞っておくことなどが確認されていた。 |
よもやま話 |
☆ 停止時の作業でポンプが空引きを起こす原因は、吸入側の液面低下が圧倒的に多い。したがって、空引き時はポンプ停止が原則である。そこに注意が払われていないように見受けられるが何故だろうか。 |
データベース登録の 動機 |
危険要因の排除に問題があったと考えられる例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、誤判断、状況に対する誤判断、無理な液抜きの継続、不良行為、規則違反、安全規則違反、計画・設計、計画不良、停止計画不良、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失、損害額800万円
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情報源 |
中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.100128、中央労働災害防止協会ホームページ
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成8年(1997)、p.80-81
中央労働災害防止協会、災害発生状況の詳細
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
タンク屋根板及び側板上部の変形.建屋9棟の窓ガラス等及び収容物破損.車両15台破損. |
被害金額 |
775万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/移送 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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