事例名称 |
スチームタービンの軸受け保温材の発火による原子力発電所の緊急停止 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2002年12月12日 |
事例発生地 |
福井県 敦賀市 |
事例発生場所 |
原子力発電所 |
事例概要 |
原子力発電所で高圧スチームタービン軸受けの発火により、原子炉が停止された。発火の原因は軸受け油主油タンクを真空に保つガス抽出機を予備のエアエゼクターに切り換えたところ、エゼクター出口Uシール部が詰まっていて真空にならず、そのため潤滑油が霧状に噴霧し保温材に浸み込んだことによる。付帯機器のさらに付帯機器の小さな部品なので、維持管理と不具合時の対策に手抜かりがあった。 |
事象 |
定格出力で運転中の原子力発電の高圧スチームタービン軸受け付近の保温材から煙が出た。保温材の取り外し作業をしている間に、火災が発生した。そのため、原子炉を停止した。このトラブルで、環境への放射能の影響はなかった。 |
プロセス |
使用 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
潤滑油(lubricating_oil) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
2002年12月12日19:00頃 タービン建屋3階の高圧スチームタービン付近の床面で油漏れのふき取り作業中、高圧タービンケーシング保温材付近から煙が出た。 19:39 保温材を取り外し中に発火、直ちに消火器で消火した。 20:51 再発火した。消火作業を行った。 21:00 原子炉を手動で止めた。 |
原因 |
タービン軸受けの主油タンクを減圧に維持するため、ガス抽出機(真空ポンプ)で引いているが、その抽出機を修理するため、予備のエアエゼクターに切り換えた。ところが、エアエゼクターでは真空にならず、軸受けからの漏洩油が霧状に噴射され、保温材に浸み込んだために、通常の発火温度より低温で発火した。真空にならなかったのは、エゼクター出口のUシール部が詰まっていたため、エゼクター機能が働かなかった。図3参照 |
対処 |
消火器による消火と原子炉の緊急停止 |
対策 |
Uシールの交換と掃除をし易い構造に変えた。また軸受け箱から潤滑油が漏洩しても保温材に浸み込まないようにカバーを設け、漏油受けを設けた。 以上はトラブルに応じた対策だけである。この様な取るに足らない部品の不具合が起こった時の影響と対策を全体に見直すことが必要ではないか。原子力関係では、厳重な検討がされているのだろうが、「もんじゅ」の金属ナトリウムの漏洩などと併せ考えると、一度再点検が必要ではないか。 |
知識化 |
どんな大きなシステムも、非常に小さな取るに足らない部品を含め成り立っている。メインの機器ではないからといって手抜きはできない。事故は往々にして、十分な検討や維持管理ができなかった小部分から起こることがしばしばある。 |
背景 |
1.日常管理の手落ち、あるいは教育・訓練の不足。 原因は付帯機器のさらに付帯機器の予備機の全く目立たない部品だが、それが不具合になれば、予定した機能が発揮できなくなる。設計者や機械担当者はそのことを理解していただろうが、運転担当は十分な教育がされていなかったか、余りにも小さい部品なので点検を見落としたかであろう。 2.機能不十分時の対策ができていなかった。 十分な真空にならない場合は軸受け油が霧状に噴霧されるのは承知していた。それに対する対策がなかった。トラブル後に漏油受けを設置している。通常の施設なら、要求されないレベルの対策であろう。原子力の場合は何かトラブルがあれば、原子炉の停止を要求される。その特殊性からみたら、対策が検討されていてよい。事前検討の不足とも言える。 |
データベース登録の 動機 |
取るに足りないような、付帯機器の小さな部品が、巨大システムを止めた例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、小部品不具合まで目が届かない、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、設計不十分、定常動作、不注意動作、見落とし、不良現象、機械現象、詰まり、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、社会的損失、信用失墜、組織の損失、経済的損失、売上の減少など
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情報源 |
経済産業省原子力安全・保安院、日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機の手動停止の原因と対策に係る日本原子力発電(株)からの報告及び検討結果について、原子力安全・保安院ホームページ、(2002)
経済産業省原子力安全・保安院、日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機の手動停止について、原子力安全・保安院ホームページ、(2002)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
高圧タービンのカバーの保温材焼損 |
マルチメディアファイル |
図3.保温材発火のメカニズム
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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